研究実績の概要 |
脂質代謝の乱れは多くの生活習慣病発症の原因であると同時に、ガン細胞の増殖を促すなど負の作用を有する。この代謝調節の中心的役割を演じているのが転写因子SREBPである。代表者らは、SREBPの活性制御機構を明らかにする研究をこれまで継続してきた中で、新たにHSP90が重要な役割を演じていることを見出してきている。HSP90阻害剤、もしくはsiRNAによりHSP90発現を低下させると、SREBP,SCAPタンパク質は速やかに分解される。この分解はユビキチン-プロテアソーム機構に依存している。代表者らは、SCAPのユビキチン化に関与するE3リガーゼの探索を行った。その結果、分解には直接関与しないものの、SCAPをユビキチン化修飾し、その構造を変化させるリガーゼxを見出した。HSP90阻害剤を用いてSCAP分解を亢進させた際に、xの発現をsiRNAで減弱させても分解に影響は認められなかった。このリガーゼxはSCAPタンパク質の305番目のリシン残基をユビキチン化させ、SREBPの活性化を促す作用を有していた。さらに詳細な解析検討の結果、305番目のリシン残基へのユビキチン化はSCAP/SREBP複合体の小胞体からゴルジへの輸送を促進する方向へと導くことが判明した。さらにHSP90作用とリガーゼxによるSCAPユビキチン化の機能相関について解析を進める必要がある。これらの知見は、脂質代謝改善のための創薬、機能性食品開発の新たな標的を示した成果と言える。
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