研究課題/領域番号 |
17F17102
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研究機関 | 国立研究開発法人森林研究・整備機構 |
研究代表者 |
北尾 光俊 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員等 (60353661)
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研究分担者 |
AGATHOKLEOUS EVGENIOS 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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キーワード | 外生菌 / カラマツコンテナ苗 / 水分動態 / 養分動態 / オゾン |
研究実績の概要 |
北海道の主要造林樹種であるカラマツは成長が早く、コンテナ苗の開発が有望視されている樹種である。カラマツでは外生菌根の接種による成長促進が報告されているが、コンテナ苗への外生菌根の導入、ならびに外生菌根による水分動態、養分動態に関する生理的知見はほとんどないのが現状である。外生菌根の形成は水や養分の吸収を助ける一方で、オゾンにより外生菌根を形成する菌の種数が極端に減少することが報告されている。本研究課題は外生菌根の有無がカラマツコンテナ苗の環境ストレス耐性へ与える影響を解明することを目的とした。 平成29年度は、外生菌を接種したカラマツコンテナ苗の育成を行った。育成したカラマツコンテナ苗を、研究協力機関である北海道大学の開放型オゾン暴露施設内にて生育させ、異なるオゾン濃度と窒素条件における外生菌根の発達と苗木の成長、養分動態を調べた。オゾン処理は通常大気のコントロール区がおよそ25ppbであるのに対して、人工的にオゾンを暴露する高オゾン処理区の濃度はおよそ75ppbであった。また、窒素処理は緩効性固形肥料を用い、低窒素処理をポットあたり150 mg N、高窒素処理をポットあたり300 mg Nとした。カラマツコンテナ苗の成長への影響を調べた結果、高オゾンにより根元直径成長が抑えられることが明らかとなった。一方で、高窒素処理は直径成長には影響を及ぼさないが、樹高成長および枝の数を増加させることが明らかとなった。また、高オゾンによって苗の成長量(総乾重)は低下し、地上部へのバイオマス分配が増加した。一方で、高窒素処理は成長量を増加させるが、バイオマス分配には影響を及ぼさなかった。オゾンと窒素との相互作用を調べた結果、高窒素処理はオゾンによる成長量の低下を防ぐことはないが、地上部へのバイオマス分配の増加を抑えることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
外生菌を接種したカラマツコンテナ苗について成長に関わるデータの解析を行った。また、2018年3月にICP(誘導結合プラズマ)発光分析の手法を用いて、カラマツ針葉内の窒素、リン、カリウム、カルシウム、マグネシウム、マンガンなどの必須元素の定量を行った。養分動態に関するデータは解析中である。外生菌根の接種に関して、菌根菌の種同定を行うための根のサンプルを採取し、冷凍保存中である。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、外生菌を接種して育成したカラマツコンテナ苗を大型ポットに移植して、外生菌根の有無が苗木植栽時の乾燥ストレス感受性に及ぼす影響について解析を行う。移植時期は北海道で最も乾燥ストレスの危険が増す7月とし、灌水停止による乾燥ストレス処理を行う。移植した苗木を対象に、外生菌根の種同定(DNA解析)、必須養分間の相互作用の解析、苗木の成長量と光合成活性の測定を行う。
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