研究課題/領域番号 |
17F17106
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
大和 修 鹿児島大学, 農水産獣医学域獣医学系, 教授 (80261337)
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研究分担者 |
RAHMAN MOHAMMAD 鹿児島大学, 共同獣医学部, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2017-07-26 – 2020-03-31
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キーワード | 動物遺伝子疾患 / 不良形質 / ライソゾーム病 / 先天代謝異常症 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、当初の計画を少し変更して、まず黒毛和種のライソゾーム病およびもう一つの神経変性性疾患の2疾患を先行して解析することとした。それは、一部の犬のオロット酸尿症およびメチルマロン酸尿症は、別の研究費で全ゲノム解析がきる可能性が浮上したため(本研究費では予算的に今年度2解析しか実施できないため)、本計画においては他の研究計画で実施できない牛の2疾患を優先して解析した。 黒毛和種のライソゾーム病に関しては、すでにこれまでの研究によって、症例の父牛の精液を確保しており、この精液から抽出したDNAおよび発症子牛のパラフィンブロック包埋組織から抽出したDNAを用いて、全ゲノム解析を実施した。現在、これらの全ゲノム配列データを基にして、ライソゾーム病の候補となる数十種の遺伝子を精査しているところである。 もう一つの黒毛和種の疾患は、未同定(確定診断できていない)の神経白質変性症を起こす致死性疾患である。組織学的特徴から数種の遺伝性神経変性疾患が示唆されている。症例のパラフィンブロック大脳組織について、各種抗体を用いた免疫染色を実施することによって、本疾患は当初強く予想されたカナバン病ではなく、メープルシロップ尿症の可能性が高いことが判明した。また、この症例のパラフィンブロック標本から抽出したDNAを用いて、全ゲノム解析を実施した。現在、前述の黒毛和種2頭を対象として、メープルシロップ尿症の原因となりうる数種の遺伝子について、原因変異を検査しているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定した解析の順序を変更したものの、平成29年度は黒毛和種の2疾患(ライソゾーム病および神経白質変性症)の次世代シーケンサーによる全ゲノム解析を実施できた。今後はこのデータに基づいて、着実に進めることが可能となった。また、神経白質変性症ついては、これまでは数種の疾患が候補となっていたが、各種関連蛋白に対する免疫組織化学染色よって、メープルシロップ尿症にある程度絞り込むことができたため、全ゲノム解析データと総合して、原因変異同定への明確な道筋がついた。
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今後の研究の推進方策 |
牛の2疾患(ライソゾーム病および神経白質変性症)については、全ゲノム解析データに基づいて、候補遺伝子を精査して、原因変異を同定していく。原因変異あるいはハプロタイプが確定できれば、種雄牛および繁殖牛群における調査を実施する。さらに、受精卵の作成を試みて、変異胚の成熟を調査することにより、本疾患の胚発生への影響についても調査する予定である。 犬および猫の先天代謝異常症(ライソゾーム病、オロット酸尿症、メチルマロン酸尿症、等)については、今後実施する次世代シーケンサー解析および他の関連研究で実施した解析結果などに基づいて、候補遺伝子を探索して、原因変異を同定していく。さらに、同定できた変異は随時分子疫学調査および疾患予防研究に展開していく予定である。
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