2018年度は、ディープニューラルネットワーク(以下、DNN)を用いた、日本における主要な森林植生タイプ(群落)ごとの森林分布図を作成した。グランドトゥルースの整備のため、北海道佐呂間町と宮崎県綾町の植物群落について現地調査を実施した。まず、複数の観測衛星による日本全域にわたるデータ(Landsat 8/OLI、Sentinel-1/C-SAR、Sentinel-2/MSI)を収集し、グラフィックスプロセッシングユニット(以下、GPU)を用いたソフトウェアを実装し、DNNによるデータの統合をした。DNNによる衛星データの統合では、異なる衛星データから、観測日が近いデータを用いることで、個別の衛星で観測が欠落している日のデータを補完することができ、高空間分解能でありながら、非常に高い時間分解能をもつ衛星データセットが生成できた。さらに、DNNによる解析の際、地形的・地質学的な特徴量を解析データに加えることで、植生分類およびモニタリングに向けた高空間分解能分布図が作成できた。複数の衛星データ、グランドトゥルースデータ、地形的・地質学的な特徴量を合わせると、非常に多量なデータ群となり、従来の手法では適切な解析が困難であった。一方、本研究でディープラーニング技術をGPUプログラミングにより実装し解析したことで、DNNは多量な特徴量の解析に適しており、さらには、群落レベルまでの植生分類に応用可能であることを示した。また、研究を通じ、Landsat 8/OLIとSentinel-1/C-SARデータを組み合わせて森林被覆の可視化と抽出のための新手法として、Enhanced Forest Cover Composite(EFCC)を開発した。さらに、双方向反射データは、広域を対象とした植生タイプの分類精度の改善に有効なデータであることを明らかにした。加えて、異なる気候変動シナリオにおける、森林群落分布の将来予測に関するモデル研究を進めた。
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