研究課題
申請者らは、近年、AU -rich element(ARE)を持つmRNAの安定化が細胞がん化に寄与することを解明し、その後、アデノウイルスの複製に必須のE1A 遺伝子にAREを持つウイルス(Ad+AU)を開発した。Ad+AUは、ARE-mRNAが安定化されているがん細胞ではE1A-mRNAが安定化され、その結果アデノウイルスの複製が起こり、がん細胞が破壊される。本研究の目的は、Ad+AUの腫瘍溶解効果を解析し、抗がん剤との併用効果を解析することである。平成30年度は、Ad+AUとシスプラチンとの相乗効果を検討した。平成29年度と同様のがん細胞を用いて、昨年の実験で検討したシスプラチン濃度を考慮しながら、Ad+AUとシスプラチンを投与し、腫瘍溶解効果が相乗的に活性化されるか検討した。方法は平成29年度と同様の手法に従い、in vitroとin vivoで行った。その結果、Ad+AUとシスプラチンとの協調効果が見られ、併用効果があることが明らかになった。また、この結果は、ウイルス投与により、シスプラチン量を減らし、その副作用を軽減できる可能性を示している。さらに、AREに特異的に結合し、ARE-mRNAを核外輸送し安定化するHuRタンパクが、アクチン依存的に移動するか確認した。その結果、がん細胞ではHuRはアクチン非依存的に核外に輸送されたのに対し、正常細胞では、アクチン依存的のままHuRが細胞質に移動することが明らかになった。従って、HuRおよびARE-mRNAは、正常ならアクチン依存的に細胞内を移動するが、がん細胞ではそのメカニズムに異常があることが明らかになった。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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