研究課題/領域番号 |
17F17304
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
野上 建紀 長崎大学, 多文化社会学部, 教授 (60722030)
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研究分担者 |
NGUYEN LAN ANH 長崎大学, 多文化社会学部, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2017-10-13 – 2020-03-31
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キーワード | 肥前磁器 / ホイアン / 有田 / 波佐見 / 長崎 |
研究実績の概要 |
本研究は、近世のアジアの陶磁器貿易をとおして、日越交流の様相を明らかにすることを目的としている。初年度となる平成29年度は、まず必要な研究機器の準備、基本文献の収集、これまでに蓄積されている資料の再整理を行った。定期的に共同研究者と打合せを行い、方針や方法を検討しながら、研究を進めた。 そして、その検討に基づき、二つの実地調査を行った。一つは近世の日本磁器(肥前磁器)の主要生産地である佐賀県有田町と長崎県波佐見町の窯業関連遺跡(窯跡、工房など)および関連史料の調査である。主として17世紀後半にベトナムを含む東南アジア向けに主に生産された製品とその生産窯に関する調査を行った。もう一つはそれらの産地で生産された日本磁器のベトナムにおける主要な消費地であるベトナム中部のホイアン出土の陶磁器に関する調査を行った。ホイアンについては、これまで昭和女子大学が精力的に考古学的調査を行ってきており、その情報収集も行った。 その他、東京(東洋陶磁学会)、長崎(長崎県考古学会)および沖縄(近世陶磁研究会)における陶磁器関連の研究会に参加し、情報収集を行った。特に今回の長崎県考古学会大会は長崎を起点とする近世の陶磁器貿易等をテーマとしたものであり、輸出する側の状況を知る上で重要な機会となった。また、近世陶磁研究会は、沖縄における陶磁器交易の様相をテーマにしたものであり、日本本土と東南アジア市場を比較する上で沖縄が重要な位置にあることを再認識することができた。あわせて沖縄から出土したベトナム陶磁の調査も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
共同研究に必要な機器も揃い、また基本文献も順調に収集できている。先行研究に関する整理と考察も行うことができている。実地踏査については、生産地(有田、波佐見、三川内など)と流通拠点(伊万里、早岐、長崎など)について行う予定であったが、その中で平成29年度は生産地の有田、波佐見、流通拠点の長崎の調査を行うことができた。三川内および伊万里、早岐の調査はできなかったが、その代わりに消費地であるベトナム中部のホイアンの実地踏査を行うことができた。また、日本国内市場とベトナムをはじめとした東南アジア市場を比較する上で重要な意味をもつ沖縄の出土遺物に関する情報も収集することができた。
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今後の研究の推進方策 |
生産地の有田、波佐見、流通拠点の長崎の調査を継続して行うとともに、平成29年度に調査できなかった生産地の三川内、流通拠点の伊万里、早岐の調査を行う。そして、これまで実地踏査は考古学資料の調査が主であったため、文献史学、民俗学、美術史学の視座を含めた調査研究も行っていきたい。とりわけ共同研究者は、磁器の文様のモチーフに関心をもち、モチーフの受容や変容のあり方について調査を行うことを考えている。さらに陶磁器生産の基盤となる陶工たちの生活についても研究の視野に入れている。限られた時間と資料であるが、平成30年度の前半に基礎資料を収集し、後半にかけて討論と考察を重ねていきたい。
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