研究実績の概要 |
19世紀後半から20世紀前半は、大英帝国、清朝、ロシアといった諸大国がヒマラヤ地域の領土をめぐり勢力争いを繰り広げた。 本研究では、外国人特別研究員のマッテオ・ミーレと共に、ダライラマ12世ティンレー・ギャンツォ(‘phrin las rgya mtsho, 1857-1875)の死(1875)から、ダライラマ13世トゥプテン・ギャンツォ(Thub bstan rgya mtsho, 1876-1933)の化身認定(1886)の間のチベットならびにその周辺国(特にブータン)の政治的・宗教的状況の解明を目指し、研究を推進してきた。具体的には、ガワンペルデン・チューキギェルツェン(Ngag dbang dpal ldan Chos kyi rgyal mtshan, 1850-1886)という摂政(rgyal tshab名代職)に着目し、同摂政が、将来のチベット元首たるダライラマ13世候補者の発見、化身認定、初期教育にどう携わったか、当時の宗教的・政治的背景の整理を進めた。 特にマッテオ・ミーレ氏が中心となり、ロサンイェシェー・テンペーギェルツェン(19世紀)の著したガワンペルデン・チューキギェルツェンの伝記、トゥプテンジャンパ・ツルティムテンジン(b. 1902頃)の著したダライラマ13世紀の伝記、テンパテンジンの著したガワンペルデン・チューキギェルツェンの記述部分についての精読作業を開始した。 また、同摂政に着目することで、19世紀後半のブータンの国際関係、特にチベットとイギリスとの関係について考察し、ブータンの近世・近代史をチベット的視点から整理を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マッテオ・ミーレ研究員が中心となり、ロサンイェシェー・テンペーギェルツェン(19世紀)の著した、ガワンペルデン・チューキギェルツェンの伝記、トゥプテンジャンパ・ツルティムテンジン(b. 1902頃)の著したダライラマ13世紀の伝記、テンパテンジンの著したガワンペルデン・チューキギェルツェンの記述部分のテキスト入力を進め、研究のセットアップを行った。 別途、本研究を進めるための基盤として、ヒマラヤ全体を視野に入れた近現代史を捉え直す作業を進めた。その成果として以下の論文を公表した。Matteo Miele, “Nepal 2015-2017: A post-earthquake constitution and the political struggle”, in Asia Maior. (アクセプト済). Matteo Miele, “Isolamento ed interdipendenza, tradizione ed impermanenza. Note sul percorso costituzionale del Bhutan”, in Annuario di diritto comparato e di studi legislativi, Vol. 8, pp. 381-404, 2017.
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