本研究の目的は、観光地における災害リスクマネジメントの現状、とくに観光業におけるビジネスと行政サイドの防災戦略を明らかにすることである。人口減少による内需の縮小が見込まれる我が国では、観光業を促進して外貨の獲得を目指す動きが有り、訪日観光客は増加している。しかし同時に日本は災害国でもあり、多くの観光地には災害リスクが存在する。東京オリンピックも見据えて訪日観光客のさらなる増加が見込まれる中、訪日観光客を災害から守る体制の確立が重要となっている。 本研究の対象地域は、東京オリンピックを見据えて訪日観光客の増加が見込まれる中、津波リスクの高い観光地(鎌倉、湘南)や火山噴火リスクのある観光地(箱根)を有する神奈川県である。神奈川県川崎市、横浜市、横須賀市、三浦市、藤沢市の津波ハザードマップをGISにより解析し、危険地域内に存在する観光業者(おもに宿泊施設)の洗い出しを行った。次に、現地予備調査をおこない、避難指示の掲示の確認、ホテルによる防災物資の備蓄など、現在の災害マネジメント対策の調査を行った。 加えて、対象を日本全国へ広げ、津波リスクの高い地域に路線を持つ鉄道会社へのインタビューを行い、これらの業者のリスク認知と避難誘導対策についても調査をおこなった。 以上の結果は、学術誌International Journal of Disaster Risk Reductionに採択・出版された。
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