研究課題/領域番号 |
17F17316
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
戸川 欣彦 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00415241)
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研究分担者 |
TRINDADE GONCALVES FRANCISCO JOSE 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2017-11-10 – 2020-03-31
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キーワード | キラル磁性 / 磁気共鳴 / スピン波伝搬 / 位相コヒーレンス |
研究実績の概要 |
本研究では、位相コヒーレントなキラル磁気結晶をベースとして超広帯域にかけての論理操作や干渉操作を実現する複合システムを構築することを目指している。そのため“キラル磁性体におけるGHz帯のスピン波応答”を“CSL ダイナミクスを介した低周波応答”や“キラル磁性体上に配置するキラルな金ナノ構造におけるキラルなプラズモン応答”に変換する基盤技術を確立する。 2017年11月より研究プロジェクトを開始した初年度は、計測システムの立ち上げに注力した。キラル磁気結晶においてスピン波の伝搬・回折・反射特性を操るには、3方向以上からのスピン波の伝搬特性を計測する必要がある。現有する低温・磁場プローバ―装置と4チャンネルベクトルネットワークアナライザの機能を最大限に活用するため、高周波プローブアームを2本追加し、多チャンネル計測への改良を進めている。並行して、微小アンテナ回路の設計を進めた。サファイア基板上にアンテナ回路を試作し、その基本伝搬特性の評価を行った。アンテナ回路にはキラル磁気結晶・電極・キラルな金ナノ構造などを配置し、キラル磁気結晶のスピン波伝搬特性を利用して周波数変換を行う。実験結果と数値計算を併用し、アンテナ回路デザインの最適化を図る。 並行して、本研究の基盤となるキラル磁気結晶における磁気共鳴に関する実験を行った。スピン波定在波を考慮したモデル構築に成功し、それらの基本特性に関して論文投稿の準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
共同研究者である外国人特別博士研究員は一昨年から研究室に在籍している。単軸性キラル磁性体CrNb3S6においてキラル磁気共鳴現象やスピン波伝搬の研究を進めてきた。本プロジェクトが開始した平成29年11月以後、マイクロ波の顕著な励磁方向依存性、磁場履歴効果、トポロジカルなキラル磁気秩序(ソリトン密度の量子化)に起因する共鳴周波数の離散化など、単軸性キラル磁気結晶に固有なキラル磁気共鳴特性を見出している。実験データの解析を進め、スピン波定在波を考慮したモデル構築に成功した。これらの知見は本研究計画を支える基盤技術となるものであり、論文投稿の準備を進めている。 並行して、多チャンネル高周波伝搬信号計測システムの立ち上げに注力した。現有する低温・磁場プローバ―装置と4 チャンネルベクトルネットワークアナライザの機能を最大限活用するため、高周波プローブアームや高周波コンポーネントを追加し、計測システムの改良を進めた。このシステム開発は3方向以上からのスピン波の伝搬特性を計測し、キラル磁気結晶においてスピン波の伝搬・回折・反射特性を操るため必要となる。加えて、微小アンテナ回路の設計を進めた。回路をサファイア基板上に試作し、その基本特性の評価を行い、良好な信号特性を得た。微小アンテナ回路上で周波数変換を行うための基本特性に関する知見を得たといえる。微小アンテナ回路構造の最適化を図るため、数値計算の準備を進めている。 これらの研究の進捗状況を踏まえ、本研究計画は順調に進行していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
多チャンネル高周波伝搬信号計測システムの開発を完了させる。実験と数値計算を併用し、微小アンテナ回路の基本特性の最適化を進める。微細なキラル磁気結晶・電極・キラルな金ナノ構造を微小アンテナ回路上に配置したデバイスを作製する。多チャンネル高周波伝搬信号計測システムを活用して、デバイスにおけるスピン波の伝搬特性を精査する。矩形型に加えてT字型のキラル磁気結晶における3方向からのスピン波の伝搬特性の解明に注力する。キラル磁気結晶の対称性やCSL の制御性を利用し、スピン波の伝搬・回折・反射特性を制御し、論理操作や干渉操作に必要となるスピン波伝送の制御技術を確立することを目指す。得られる研究成果は随時、学会発表と論文化を進める。
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