研究課題/領域番号 |
17F17326
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
若林 克法 関西学院大学, 理工学部, 教授 (50325156)
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研究分担者 |
LIU FENG 関西学院大学, 理工学部, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2017-11-10 – 2020-03-31
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キーワード | トポロジカル状態 / Zak位相 / tight-binding model / エッジ状態 / グラフェン / 原子層物質 / フォトニック結晶 / 円偏向電磁場 |
研究実績の概要 |
炭素原子だけからなる一原子層膜であるグラフェンの発見以降、数原子分の厚みしかもたない原子層物質研究がさかんにおこなわれている。本研究課題では、原子層物質における特異な電子状態の探索とその設計、さらには、円偏向電磁場照射による電子状態制御とそこでの電子輸送特性の解明を目的としている。 本年度は特に、ポリアセチレンの電子物性の解析に用いられるSu-Schrieffer-Heeger模型に着目し、この模型を2次元に拡張することで、Vectored Zak位相(運動量空間におけるベクトルポテンシャルであり、以下では単にZak位相とよぶ)とよばれるトポロジカル量に着目した。有限なZak位相が出現する結晶格子形状を見出すことで、たとえベリー曲率(運動量空間における磁場)がゼロであっても、トポロジカル相が実現できることを見出した。本年度は特に、ケクレ格子状の結合交替をもった蜂の巣格子系について適用し、トポロジカル状態の実現とエッジ状態の出現を強結合模型の範囲で確認した。さらに、このアイデアをフォトニック結晶へ拡張することで、新しいフォトニックデバイスが設計できる可能性を示した。特に、エッジ状態の伝搬が、種々の乱れに対して非常に強固であることを計算機シミュレーションによって、明らかにした。 上記の課題と並行して、円偏向電磁場照射下における量子細線における電子伝導特性の解析も行なった。円偏向電磁場照射により系のトポロジカル状態が制御できることを示した。今後は、有限の幅をもつリボン形状の場合などに拡張する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、Zak位相を用いたトポロジカル状態の設計指針について、その理論的な基礎的な枠組みの構築に大きな進展があった。さらに、正方格子系や蜂の巣格子系への拡張を議論した。また、実験グループへの提案を目論見、フォトニック結晶への適用を行うことができた。これらの成果を論文として、出版できたことは大きな成果と言える。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、研究課題を十分に進めることができた。今後は、円偏向電磁場照射によるトポロジカル状態の制御、さらには、コーナーエッジ状態などの高次トポロジカル状態への展開を計る。
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