研究課題/領域番号 |
17F17336
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
楊井 伸浩 九州大学, 工学研究院, 准教授 (90649740)
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研究分担者 |
JOARDER BIPLAB 九州大学, 工学研究院, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2017-11-10 – 2020-03-31
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キーワード | 光学特性 / フォトン・アップコンバージョン / MOF |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、様々な発光性の配位子を用いて一連の新規イオン性MOFを合成し、そのナノ細孔中にカチオン性の三重項増感剤(ドナー)をイオン性相互作用によりその位置と量を精密に制御して配置することで、これまで困難を極めていた固体中でのドナー凝集という問題を合理的に解決し、非常に弱い光強度で高効率なフォトン・アップコンバージョンを達成することである。フォトン・アップコンバージョンとは長波長の光を短波長の光に変換することであり、これまで利用が困難であった低エネルギー光を利用可能にすることで、太陽電池や光触媒などの太陽光利用デバイスの効率を飛躍的に向上させるとして期待されている。 初年度は発光性部位を有する配位子の合成を行い、続いて金属イオンと組み合わせることでMOFの合成を行った。溶媒や濃度の条件検討を行うことにより、複数の単結晶を合成することに成功した。単結晶構造解析により、そのうちの複数のMOFにおいてカウンターイオンの存在が確認でき、目的とするイオン性構造を有していることが明らかとなった。興味深いことに、カウンターイオンが占める空間以外にもナノ細孔が存在し、比較的大きなサイズのドナー分子を包摂するだけの空間があることが分かった。熱重量測定により得られたMOF中に溶媒分子がゲストとして包摂されていることが分かった。加熱真空引きによりゲストを抜いても安定であることを粉末X線回折測定より明らかにした。また、得られたMOFは蛍光を示すことから、発光性かつイオン性のMOFを合成することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の目的であるイオン性MOFの合成を達成した。研究開始直後は中性のMOFのみが得られ、イオン性のMOFを得ることができなかったが、溶媒や濃度などの条件を変えて系統的に検討を行うことで、目的とするカウンターイオンが含まれたイオン性のMOFを合成することに成功した。また、条件検討を行う中で、異なる構造を有する複数種類のイオン性MOFを合成でき、どのMOFも優れた発光特性を示すことが明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
MOFの細孔中に三重項増感剤(ドナー)を導入し、アップコンバージョン特性の評価を行う。ドナー分子としてはイオン性の金属錯体を用い、MOF中に存在するカウンターイオンとイオン交換を行うことにより、ナノ細孔中へと吸着させる。ドナー分子が凝集するとアップコンバージョン効率が大幅に低下してしまうため、導入条件を最適化することにより分子分散状態でドナー分子を吸着させる。得られた複合体のレーザー励起発光スペクトル、アップコンバージョン発光強度の励起光強度依存、アップコンバージョン発光寿命を測定することにより、アップコンバージョン特性の評価を進める。
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