研究課題/領域番号 |
17F17338
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
高橋 正彦 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (80241579)
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研究分担者 |
YU LE 東北大学, 多元物質科学研究所, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2017-11-10 – 2020-03-31
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キーワード | 時間分解電子運動量分光 / 原子運動量分光 / 化学反応ダイナミクス / 非断熱化学動力学計算 / ポンププローブ分光 |
研究実績の概要 |
本研究計画の目的は、(1)化学反応における電子動力学の時間分解電子運動量分光研究、および(2)化学反応における原子核運動の動力学の時間分解原子運動量分光研究の二つの研究課題の推進である。 上記研究課題のうち(1)に関しては、研究代表者らが世界に先駆けて測定した時間分解電子運動量分光データ[M. Yamazaki et al., Phys. Rev. Lett., 114, 103005 (2015)]に痕跡として残るアセトン分子の光誘起三体逐次解離反応の超高超高速電子ダイナミクスを分子軌道の形状に関する実験と理論との比較研究を通して抽出するため、購入した計6台のパソコンを並列計算システムとして整備し、非断熱化学動力学トラジェクトリ―計算を開始した。具体的には、当該反応に関与するポテンシャル曲面をCAS(8,7)-3singlet-3triplet/6-31+G**レベルの高精度で構築し、電子緩和や炭素原子間化学結合の切断を含む34個の波束トラジェクトリ―を既に得ている。 一方、(2)に関しては、研究代表者らが有する世界に群を抜く超高感度の原子運動量分光装置[M. Yamazaki et al., Rev. Sci. Instrum. 88, 063103(2017)]を用いて希ガス及び二原子分子を対象とした系統的実験を行い、本分光により分子振動波動関数の形状を運動量空間で直接観測できることを初めて実証することができた。この成果を踏まえて、化学反応における原子核運動の動力学研究を推進すべく、レーザー光ポンプ-高速電子線プローブの形式の時間分解原子運動量分光の開発を進めると共に、実験結果と比較するための理論の構築を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画の二つの研究課題(1)化学反応における電子動力学の時間分解電子運動量分光研究、および(2)化学反応における原子核運動の動力学の時間分解原子運動量分光研究の双方において得たこれまでの成果はいずれも国際学会で招待講演を受けるなど、ある一定の評価を与えてよいと判断する。 さらに、研究分担者の本外国人特別研究員も研究代表者のみならず、研究代表者が主宰する研究室メンバーと日常的に会話や議論を重ねるようになるなど、日本での生活を問題なく過ごしている。 以上により、本研究計画は概ね順調に進行しているものと判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究はおおむね順調に進行しているので、今後も引き続き当初の研究計画にしたがって研究を推進する。具体的には、(1)化学反応における電子動力学の時間分解電子運動量分光研究においては、アセトン分子の光誘起三体逐次解離反応を対象とした非断熱化学動力学計算を続行し、研究代表者らが2015年に得た実験データ[M. Yamazaki et al., Phys. Rev. Lett., 114, 103005 (2015)]を再現するような古典軌道の組み合わせを探る。膨大な計算量が予想されるので、データ保存用ハードディスクを追加購入する。以上により、当該化学反応の電子ダイナミクスを可視化する“分子軌道ムービー”を半実験的に得る。一方、(2)化学反応における原子核運動の動力学の時間分解原子運動量分光研究においては、多原子分子の量子化学計算で求めた振動波動関数を用いて分子を構成する原子核一つ一つの運動量分布を与える理論とその計算プログラムを構築し、本年度に開始予定の安定な多原子分子を対象とした時間分解原子運動量分光実験データとの比較を行い、過渡系の原子運動量分布を定量的に得る解析方法を確立する。
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