研究実績の概要 |
これまでジシアノメチル基をメゾ位やベータ位に有するポルフィリンやサブポルフィリンを合成し、それを酸化してジシアノメチルラジカルを発生させると、スピン密度の非局在化により発生したラジカル種が極めて効果的に安定化されることを明らかにしてきた。またベータ位にジシアノメチルラジカルをもつポルフィリンは、固体状態では二量体として存在するが、溶液中では二量体が解離した2つのモノラジカル種の状態との平衡状態にあるという、動的共有結合(Dynamic Covalent Bond)を有していることがわかっていた。 本年は二箇所のベータ位にジシアノメチル基を有する亜鉛ポルフィリンおよびニッケルポルフィリンを合成し、それを酸化してジシアノメチルラジカルを発生させると、シクロファン型のクロリンダイマーが得られ、それがDynamic Covalent Chemistryを示すことを明らかにした。また、中心金属の種類によってラジカルへの結合解離の活性化エネルギーが異なることも温度可変NMRやESRから明らかにした。さらに、置換基の異なるポルフィリンを用意し、交差実験によってDynamic Covalent Chemistryの機構の解明に挑んだ。DFT計算を用いてこれらの現象の解釈も行なった。この研究成果は学会発表や論文(Angew. Chem. Int. Ed. 2020, 49, 4320)として報告した。
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