研究課題/領域番号 |
17F17344
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
浜地 格 京都大学, 工学研究科, 教授 (90202259)
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研究分担者 |
ZHU HAO 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2017-11-10 – 2020-03-31
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キーワード | プロテオミクス / タンパク質ラベリング |
研究実績の概要 |
本年度は、活性酸素(窒素)種の中でも過酸化水素に的を絞り、過酸化水素と選択的に反応し、反応活性が大幅に向上するようなconditional proteomicsのためのラベル化剤の分子設計を行った。具体的には、過酸化水素応答部位となるフェニルボロン酸にラベル化されたタンパク質を濃縮したり、あるいはイメージングするために必要な親和性タグ(フルオレセインなどの蛍光団も含む)を結合したタンパク質ラベル化剤である。フェニルボロン酸は過酸化水素(他の活性酸素種とはほとんど反応しない)との選択的反応し、ヒドロボレーション反応を起こす。これと連動した脱離反応をフェニルボロン酸骨格に組み込むことによって、いろいろな蛋白質と高い反応性を示すキノンメチドが発生するような小分子を2種類設計し、有機合成によって得た。またこれらの簡便な合成ルートをほぼ確立することができた。得られた分子は、NMRや高精度質量分析によって確実に同定した。さらに、得られた二つのラベル化剤の過酸化水素との反応性を、インビトロ実験によって評価し、次に過酸化水素共存下でのモデルタンパク質とのラベル化特性を評価した。その結果、フェニルボロン酸骨格のオルト位に脱離性を導入した化合物の過酸化水素との反応性は、パラ位に脱離性を導入した化合物よりも低いものの、過酸化水素非存在下での安定性が高く、自己分解によるタンパク質の非特異ラベル化のバックグラウンドが低いことが分かった。すなわち、オルト置換型ラベル化剤の方が、過酸化水素に対する応答特性が優れていることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の実験計画にそって、研究が進展し、過酸化水素存在下で反応性が大きく向上するという目的にかなったラベル化剤分子の合成に成功した。これによって、次年度は申請書で目指す活性酸素種に関するConditional proteomicsへ進むことができると期待している。
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今後の研究の推進方策 |
今のところ順調に進展してきているので、研究計画に沿って進めるつもりであるが、実際に細胞系でのConditional proteomicsを実施した時点で、新たな問題に直面する可能性もある。この場合、過酸化水素に応答する部位の改良やラベル化されるユニットの変更(現在は蛍光団であるクマリンやフルオレセインを使っているが)を行い、あらためて分子設計や最適化を実行する可能性も視野に入れて、柔軟な対応をするつもりである。
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