研究課題/領域番号 |
17F17345
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
中村 潤児 筑波大学, 数理物質系, 教授 (40227905)
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研究分担者 |
SINGH SANTOSH 筑波大学, 数理物質系, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2017-11-10 – 2020-03-31
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キーワード | 燃料電池 / 酸素還元反応 / グラフェン / 窒素ドープカーボン / 回転電極試験 / MEA / 白金代替触媒 / 3次元構造 |
研究実績の概要 |
固体高分子型燃料電池に用いる白金代替酸素還元触媒として高活性窒素ドープグラフェン触媒の調製を試みた。特に活性点近傍に疎水性を賦与することによる活性向上を試みた。触媒はNaCl微粒子をグラフェンナノシートで包摂させ、次いでNaCl微粒子を取り除くことによって3次元のグラフェン触媒構造を構築した。期待通り3次元グラフェン触媒の撥水性は増し、疎水性を触媒に賦与することができた。回転電極試験およびMEA触媒試験では極めて高い触媒活性(世界最高レベル)を示した。一方、NaCl微粒子を用いずに調製した窒素ドープ触媒の活性は著しく低かった。ラマンスペクトルやXPSの測定結果において触媒調製時のNaClの有無に起因する大きな差異は認められない。しかし、触媒活性やターフェルプロットの傾きにおいて大きな違いが認められるので、3次元触媒構造が触媒活性に大きく影響するものと考えられた。この点は酸素還元触媒の設計指針において非常に重要な意義を有するとみなされ、ハイインパクトジャーナルへの論文発表準備を進めている。また、反応機構に関する実験も行った。グラフェンにドープした窒素は主としてピリジン型窒素であるが、硫酸電解質において直ちにプロトンが窒素に配位し、ピリジニウムイオンが生成した。さらに酸素中ではピリジニウムイオンがN-H種へと還元されることが示唆された。このピリジン型窒素の化学的変化が窒素原子周辺の炭素原子の反応性を向上させているものと予想している。窒素雰囲気下ではN-H種への転換が観測されなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
最初の実験において幸運にも大成功を収めた。NaCl微粒子を用いてグラフェン3次元構造に疎水性を賦与することに成功し、さらにその触媒が世界最高レベルの高活性を示したからである。
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今後の研究の推進方策 |
2019年11月の終了までに論文を投稿する。また、疎水性が高活性を示す証拠を明確にする実験を行う。すなわち、酸素圧力依存性の測定、XPS観測および反応中間体のオペランド測定を行う。そのために反応セル付きin-situ赤外分光測定を立ち上げる。素過程を仮定し、分光実験結果および反応速度の圧力依存性の結果に基づき速度論的解析を行い、疎水性の有無が反応速度に及ぼす効果を明らかにする。
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