研究課題/領域番号 |
17F17356
|
研究機関 | 公益財団法人川崎市産業振興財団(ナノ医療イノベーションセンター) |
研究代表者 |
片岡 一則 公益財団法人川崎市産業振興財団(ナノ医療イノベーションセンター), ナノ医療イノベーションセンター, センター長 (00130245)
|
研究分担者 |
LI JUNJIE 公益財団法人川崎市産業振興財団(ナノ医療イノベーションセンター), ナノ医療イノベーションセンター, 外国人特別研究員
|
研究期間 (年度) |
2017-11-10 – 2020-03-31
|
キーワード | ブロック共重合体 / 高分子ベシクル / 酵素-プロドラッグ療法 / がん |
研究実績の概要 |
近年、精密設計したブロック共重合体を構成高分子とする自己組織化高分子集合体を構築し、薬剤を標的とする疾患部位選択的に送達するドラッグデリバリーシステム(DDS)の開発が世界中で盛んに行われており、一部は臨床試験にまで進んでいる。本研究では、従来 のDDSをブラッシュアップし、薬剤ではなく「生体触媒である酵素」を送達することで、 疾患部位で薬剤を長期間にわたって生成するナノリアクタシステムの構築することを目的としている。具体的には、腫瘍環境内でのみ酵素による薬剤産生がONになるスマートな酵素封入型高分子べシクルを構築し、腫瘍において薬剤が産生され、抗腫瘍効果を得ることで本システムの有用性を実証する。 当該年度は、標的とする酵素を失活することなく封入可能な高分子ベシクルの構成高分子の合成に注力した。具体的には、生体への安全性が担保されている反対電荷を有するブロック共重合体の合成を試みた。液体クロマトグラフィーやプロトン核磁気共鳴スペクトル等で評価を行い、所望の高分子合成を確認した。また合成高分子を用いて、酵素を封入した高分子集合体を構築し、動的光散乱測定を行なったところ、直径100 nmほどで単分散な粒子であることを確認した。また透過型電子顕微鏡より、その粒子がベシクル構造であることを確認した。また次年度に予定していた、ベシクル中の酵素活性を評価したところ、nakedな酵素と同等の酵素活性を有していることが明らかとなった。すなわち標的とする酵素の活性を維持したまま申請者の調製した高分子ベシクル内に封入可能であることを強く支持する結果である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
H29年度は、高分子ベシクルの構成高分子の合成および高分子集合体の調製・その物性評価に注力して研究を実施した。その結果上記に記載したように所望の高分子および直径100 nmの高分子ベシクル調製に成功し、さらに以下に示す、次年度以降に計画していた実験を実施した。 ・標的とする酵素を内水相に封入する高分子ベシクルを調製することに成功 ・高分子ベシクルに封入した酵素の活性を測定したところ、nakedな酵素と同等の酵素活性を維持していることを確認 上記の結果は、次年度以降に予定している疾患モデル動物を用いた評価を行う上で大変有用な情報であり、今後の研究を迅速に遂行できると期待できる。
|
今後の研究の推進方策 |
H29年度において、活性を維持したまま高分子ベシクル中に酵素を封入することに成功した。ここで申請者が提案しているシステムは、生体内の血流中において高い血中安定性を有している必要がある。 そこでH30年度は、まず蛍光標識した酵素を封入した高分子ベシクルを用いて、マウスに尾静脈後にin vivo共焦点顕微鏡で血中安定性の評価を実施する。ここで有用な結果が得られた場合は、腫瘍を担持したマウスを用いて腫瘍集積性等を評価する。血中での安定性が低い場合は、高分子ベシクルを構成する高分子の側鎖を適宜変えることで改善を試みる。
|