研究課題/領域番号 |
17F17361
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
馬場 暁 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (80452077)
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研究分担者 |
NOOTCHANAT SUPEERA 新潟大学, 自然科学系, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2017-11-10 – 2019-03-31
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キーワード | 表面プラズモン / 有機太陽電池 / 近赤外光 |
研究実績の概要 |
本研究では、金ナノロッドを分散させた有機薄膜をナノグレーティング電極上に集積することで、近赤外域に励起する局在・伝搬型両方のプラズモンを同時に励起させて、近赤外域での光電変換特性の向上を達成することを目的としている。今年度は以下のように研究を進めた。 1)有機太陽電池の近赤外域プラズモン励起特性 800nm程度の近赤外域まで光吸収を持つPTB7:PCBMを活性層とした金属グレーティング構造プラズモニック有機太陽電池を作製した。このデバイスに対して反射率測定を行い、700-800 nmに伝搬型の表面プラズモンが励起することを確認した。入射光の偏光を変えて測定することで、金属グレーティング上の表面プラズモン励起、光散乱についてもそれぞれ有機太陽電池における効果を検討した。近赤外域のプラズモン励起が活性層の光吸収と一致することで、37%程度の大きな変換効率の向上を確認した。 2)表面プラズモン励起による光熱効果の評価 有機太陽電池における近赤外域の表面プラズモン励起を詳細に調べるために、表面プラズモン励起の光熱効果について検討した。まず、熱発電デバイスに接続したAlグレーティング上に光を照射し、表面プラズモン励起の有無による熱電流の測定を行った。この結果、表面プラズモン励起による熱電流の増加が観測された。また、フラットなAlとプラズモン励起の無い(s偏光)Alグレーティングの熱電流を比較したところ、プラズモン励起が無い場合でもフラットな場合よりも熱電流の増加が観測された。これにより、グレーティング構造による光散乱も関係していることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、近赤外域のプラズモン励起を利用した有機太陽電池の高性能化に関する内容であり、一年目で近赤外域のプラズモン励起による大きな効率の向上が確認された。 さらに表面プラズモン励起による光熱効果も確認されており、近赤外域のプラズモン励起を用いた有機太陽電池や有機センサへの応用のためのデータを得ることができた。 以上のように、本課題に関する成果が得られており、概ね当初の計画通り達成できた。これらの結果は、今後学会での報告や論文での発表などを行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度はこれまでに得られた研究をさらにすすめ、1)グラフェンナノアレイ・金ナノロッド・金属グレーティングそれぞれのプラズモンの相乗効果について、FDTDシミュレーションを行うとともに、実際に金属グレーティング上にグラフェンナノアレイ、金ナノロッドパターンを有機薄膜と共に堆積して、光学特性の評価を行う。2)1)の系について、有機薄膜の膜厚を変えることにより、それぞれのプラズモン励起の距離を変化させるなど、3種類のプラズモン励起の相互作用について、近赤外域での光学特性、光電変換特性の検討を行う。3)2)の成果と基に、有機太陽電池やセンサの作製を行い、近赤外域における3種類のプラズモン励起効果について詳細な検討を行う。また、フレキシブル基板上に有機太陽電池を作製して、曲げや伸縮によるプラズモン励起特性の評価と、3種類のプラズモン励起が曲げ状態・伸縮状態でのデバイスの光電変換特性に寄与する効果について検討する。 また、得られた成果は国内・国外の学会で報告を行うことにより公表し、国際論文誌での誌上発表も積極的に行う。
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