研究課題/領域番号 |
17F17366
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
宇佐美 徳隆 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (20262107)
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研究分担者 |
HAINEY, JR. MEL 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2017-11-10 – 2020-03-31
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キーワード | アルミニウム誘起層交換成長 / シリコン / 窒化ガリウム |
研究実績の概要 |
これまでに、アルミニウム誘起層交換成長により形成するシリコン薄膜と、さらにその薄膜上に成長する窒化ガリウムの成長条件の最適化に大きな進展があった。高品質な窒化ガリウムを得るためには、下地となるシリコンの品質が極めて重要であり、シリコン薄膜の方位ゆらぎを低減することで、エックス線ロッキングカーブの半値幅を指標とする窒化ガリウムの結晶品質は向上した。また、シリコン薄膜のモフォロジーも、窒化ガリウムの品質に大きな影響を及ぼす。二次元連続膜状のシリコン薄膜上に窒化ガリウムを成長した場合には、初期に島状成長した窒化ガリウムの結晶粒が衝突する際に、クラック生成や方位ゆらぎの増大といった問題が生じた。一方で、意図的にシリコンを非連続膜とすることで、この問題は緩和され、エックス線ロッキングカーブの半値幅は約0.9°と非常に狭い値が得られた。このような高品質な窒化ガリウムの成長は、非晶質石英基板および表面を酸化したシリコン基板のいずれにおいても可能であった。本成果は、窒化ガリウムをベースとするマイクロLEDへの貢献が期待できる。 また、アルミニウム誘起層交換成長によるシリコン薄膜の成長において、これまでの非晶質基板に加えて、各種単結晶基板を用い、その効果について検討した。その結果、格子不整合度が大きく、結晶構造も異なる六方晶基板を用いることで、非晶質基板と比較して配向性に優れたシリコン薄膜が得られるということがわかった。今後、窒化ガリウムの成長への展開を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでにデバイス作製に必須となる高品質な窒化ガリウムをシリコン薄膜を介して多様な基板上に成長できる条件を確立しつつある。この材料を利用することで、今後光学特性評価とデバイス作製が可能となると見込まれる。窒化ガリウムと光学特性の相関については、原著論文として公表する予定である。また、アルミニウム誘起層交換成長によるシリコン薄膜の成長において、基板材料の結晶構造や格子定数の影響を調査した研究成果は、結晶工学の基礎的な観点で重要な知見と考えている。このように重要な成果が得られているため、本研究は順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに最適化したシリコン薄膜と窒化ガリウムの成長条件をベースに、マイクロLEDを作製するための多重量子井戸構造の成長に展開し、デバイス作製と評価を実施する。また、アルミニウム誘起層交換成長によるシリコン薄膜の成長においては、優先方位への格子不整合度の影響や、薄膜材料の混晶化などへ展開し、より系統的な調査により体系化する。これらの成果を複数の原著論文として纏める予定である。
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