本年度は,強度輸送方程式に基づく蛍光及び位相の3次元計測を行なうシステムを構築し,蛍光ビーズを用いた原理検証実験と,神経細胞を用いたバイオ応用に適用した。強度輸送方程式に基づく蛍光イメージングでは,通常の落射型フルフィールド蛍光顕微鏡の構成を元に,可変焦点レンズによる焦点距離を変更させて3カ所で蛍光像を取得し,位相分布を求める。バイオ応用では,蛍光タンパク質が導入された細胞や細胞核の大きさが数マイクロメートルから10数マイクロメートルであるため,擬似点光源として考えることができ,伝搬後に広がった光波は空間コヒーレンスを有すると考えられる。強度画像と位相分布から複素振幅分布を再構成し,光波伝搬計算によりフォーカスの合った蛍光再生像を得ることに成功した。位相計測では,He-Neレーザー光及びLED光を用いて透過型配置により透過像を異なる奥行き位置で3枚取得した。強度輸送方程式を用いて位相分布を計測した。蛍光ビーズ及びマイクロレンズアレイを計測物体として用いて測定した。空間的な分布に不均一性が残るものの位相分布を計測することができている。得られた研究成果をまとめ学術論文を投稿する準備を整えている。また4月に国際会議で発表し,研究成果の情報発信に努める。位相計測の応用分野を開拓するために,ディジタルホログラフィによる位相計測を実施した。高速記録可能なイメージセンサを用いて,可聴域を超える周波数の音波分布の記録と再生を行なった。スピーカーを用いた実験により周波数が正しく計測可能であることと,超音波の音声データを再構成することに成功した。
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