本年度は,昨年度に構築した蛍光3次元計測の実験系を元に,位相3次元計測可能なディジタルホログラフィック顕微鏡の光学系を導入し,蛍光と位相の同時計測可能なマルチモーダルディジタルホログラフィック顕微鏡を構築した。細胞核に蛍光タンパク質を導入したヒメツリガネゴケを用いて蛍光と位相の同時センシングを行ない,再構成伝搬計算から焦点の合った3次元像の再構成に成功した。蛍光イメージングからは細胞核の3次元情報が得られ,位相イメージングからは細胞壁などの細胞の構造情報が得られている。このことより,蛍光と位相の同時イメージングにより対象物体から様々な情報を得ることができることを実証した。これらの研究成果をまとめ学術論文に投稿している。さらに国際会議で発表し,研究成果の情報発信を行なった。今後はヒメツリガネゴケの幹細胞化プロセスを観察するためにタイムラプス計測可能なシステムに拡張する。細胞の厚みや核の変化などを同時計測し,細胞の正常及び異常の判定に応用することを試みている。そのために安定した位相計測法の確立が必要である。これまでに構築した物体光と参照光を空間的に分離したオフアクシス光学系から共通光路型に変更する光学系を考案した。ビームスプリッタにより2光束に分離し,片側にはピンホールを挿入することでほぼ同軸型の配置で一様な強度分布をもつ参照光を生成することができる。解像度チャートを用いた位相計測結果から時間的に安定し,かつ定量的に位相計測が可能であることを実証した。
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