研究課題/領域番号 |
17F17371
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
金 哲佑 京都大学, 工学研究科, 教授 (80379487)
|
研究分担者 |
ZHANG FENGLIANG 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 外国人特別研究員
|
研究期間 (年度) |
2017-11-10 – 2021-03-31
|
キーワード | ベイズ / 構造同定 / 異常検知 / 振動モニタリング |
研究実績の概要 |
振動モニタリングによる橋梁点検の高度化のために,構造同定精度の向上に着目し,逐次同定によるベイズ長期モニタリングの枠組の中に,2段階ベイズ同定を取り込むことで同定精度の向上と構造物の性能評価に向けて研究を進めている. H30年度の研究では,申請者が今まで行ったモニタリングデータを用い,ベイズ実働モード解析法の整備と精度向上方法について事前検討を行った.具体的には,計算負担が大きい現在のベイズ実働モード解析法の弱点を解決するとともに自動化のための逐次構造同定の実現を目指して,事前情報を利用しないPeak Pickingとベイズ実働モード解析法を融合した手法の可能性について予備検討を行った. また,「時系列解析にベイズ回帰を取り入れた外部因子の影響検討」と「リアルタイムでベイズ構造同定を可能にする枠組」についても検討を行った.その結果,ベイズ回帰を取り入れた外部因子の影響検討では,季節変動の体表的な要因である温度の変化のみならず不規則に発生する極端なイベントに対応できる回帰モデルとしてARIMAモデルが有効であることが分かった.特に, ARIMAモデルによる回帰手法は,極端なイベントを含む季節変動の逐次更新にも拡張できる利点があることが分かった. 提案のリアルタイムでベイズ構造同定を可能にする枠組の妥当性と実用性の検証のために,鉄道橋梁に遠隔計測装置を設置し,洗掘モニタリングに適用している.また,国内の学術会議およびベルギのGhent大学で開催されたIALCCE2018に参加し関連研究の動向調査を行なった.またH30の研究成果は2019年のAustralia,Brisbaneにて開催のEASEC16に投稿済みである.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の研究では,計算負担が大きい従来のベイズ実働モード解析法の問題点の解決に向けて,事前情報を必要としない枠組みの提案と逐次構造同定を可能にする手法の提案に着目して研究を進めてきた.現在までの検討では,自動化と逐次構造同定を実現するために事前情報を利用しないPeak Pickingとベイズ実働モード解析法を融合した手法の有効性について予備検討を行っている.周波数領域の改良ベイズ実働モード解析法の有用性については,加速度振幅が0.1gal程度の実橋梁の常時微動の構造同定に適用し,可能性を確認している.ただし,同定振動数のばらつきも確認され,改善の可能性について検討を進めている. その他,構造同定による損傷同定法の提案にも着手しており,周波数領域の改良ベイズ実働モード解析法により同定された振動特性の確率分布を用いたベイズ異常検知について理論の妥当性検討も行っている.現在,理論の妥当性は確認しつつあるものの,本研究が目指す長期モニタリングへ適用するための逐次ベイズ仮説検定については今後の検討が必要である. よって,研究の進捗状況はおおむね順調に進展していると評価している.
|
今後の研究の推進方策 |
初年度の研究結果と課題を踏まえて,今後の研究推進について以下の方策を定めることで,研究目標の達成を目指す. 理論の妥当性検討を行っているベイズ異常検知法の開発と,適用性について検証を行う必要があり,研究2年目の研究推進方策としては,開発中の2段階ベイズ同定手法の妥当性検証と,国際ジャーナルや国際会議での成果の公表に着目している.現在,関連分野の権威ある国際ジャーナルであるStructural Health Monitoringに投稿の計画であり,12月Australia,Brisbaneにて開催のEASEC16に発表の予定である. 2段階ベイズ同定手法の妥当性検証のために,長期常時微動モニタリングを実施しており,そのデータを用い妥当性の検証を行う計画である.さらに開発のベイズ同定手法のアルゴリズムを直接センシングユニットに書込みエッジコンピューティングによる構造同定の枠組みも提案する計画である. ベイズ異常検知については,建物のベンチマークテストデータと橋梁の損傷実験データを用いて,その実用性を検討する計画である.建物のベンチマークテストデータを利用する理由として,特別研究員の出身国である中国では建物も土木構造物の範疇に入っており,建物のモニタリングも特別研究員には重要なテーマであるためである.
|