研究課題/領域番号 |
17F17373
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
春日 郁朗 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (20431794)
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研究分担者 |
LIU MIAOMIAO 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2017-11-10 – 2020-03-31
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キーワード | 抗生物質耐性遺伝子 / 下水再生水 |
研究実績の概要 |
再生水試料からの抗生物質耐性遺伝子(antibiotic resistance genes: ARGs)の解析方法を検討するために、モデル細菌として大腸菌を用い、工程水からの細菌回収、DNA抽出方法を比較した。検討の結果、混合セルロースエステルメンブレンによって回収した細菌を、市販のキットで抽出する方法が最も高い回収・抽出効率を示すことが確認された。 下水二次処理水を原水とする国内の二か所の下水再生水処理施設(A及びB)において、調査を実施した。採水にあたっては、各工程水を個別に採水した。25種類のARGs及び4種類の可動遺伝因子のスクリーニングの結果、18種類が検出された。内訳は、テトラサイクリン系抗生物質耐性遺伝子が9種類、サルファ剤耐性遺伝子が2種類、キノロン系抗生物質耐性遺伝子が1種類、マクロライド剤耐性遺伝子が3種類、可動遺伝因子が3種類である。二か所の下水再生処理施設の二次処理水からはこれら18種類の遺伝子が検出されたが、処理後の再生水からは5種類しか検出されず、再生水処理によってARGsの除去が効率的に行われていることが推察された。 16S rRNA遺伝子を標的としたアンプリコンシーケンシングによって、工程水中の微生物群集構造を解析した。塩素消毒後(再生処理施設A)あるいは膜ろ過後(再生処理施設B)に微生物群集のアルファ多様性は大きく減少した。塩素消毒後(再生処理施設A)の再生水中では、 Mycobacteria属、Bacillus属、Clostridiales目、Burkholderials目に近縁な細菌群が優占していた。膜ろ過後(再生処理施設B)の再生水中では、 Pseudomonas属、Comamonadaceae科に近縁な細菌群が優占していた。処理工程におけるこれらの微生物群集の組成の変化は、ARGsの組成にも影響を及ぼすことが推測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
調査対象の処理施設を選定し、期間内にARGsのスクリーニング調査、細菌回収及びDNA抽出方法の検討を行うことができ、おおむね順調な進捗と判断できる。特に、処理施設の中の一つについては、時期を変えて2回の採水を行うことができた。今後も定期的に採水を実施することでデータの拡充を進めたい。 今年度は評価対象とすべきARGsのスクリーニングに注力したため、定量PCRは次年度以降に実施することとした。ただし、定量PCRの実験条件などは精査済みであり、速やかにスクリーニングした対象ARGsの定量を進めるための準備は整っている。一方、再生水中のバイオマス、ARGsの濃度は極めて低いことも明らかとなり、細菌回収やDNA抽出条件の更なる検討は今後も必要と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、再生水処理施設における調査を実施して、処理工程におけるARGの存在量や多様性の変化に関するデータを蓄積する。また、実際の二次処理水を用いて、再生水処理を再現した室内実験を実施し、塩素消毒やオゾン処理などによってARGsがどのように処理されるのか、その除去メカニズムについての知見を深め、最適な処理条件を探索する。
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