研究実績の概要 |
下水再生水処理では、細胞内だけではなく、細胞外に存在するDNA画分中の抗生物質耐性遺伝子(ARGs: Antibiotic resistance genes)に注目する必要がある。本研究で確立した限外ろ過膜を活用した細胞外DNAの回収率にについて詳細な評価を行った。まず限外ろ過膜を用いてすべての画分のDNAを試料中から濃縮した。その後、細胞内DNA及び懸濁物に付着した細胞外DNA(Ads_exDNA)を、遠心分離によって溶存態の細胞外DNA(Dis_exDNA)から分離した。Ads_exDNAについては、プロテアーゼKによる処理を施すことで回収率が向上することが明らかになった。Dis_exDNA及びAds_exDNAはシリカを用いて精製し、細胞内DNAについては既成のキットを用いて抽出した。Dis_exDNAの回収率を評価するために、異なる長さのDis_exDNA(10, 4, 1.0, 0.5 kbp)をスパイクして実験を行ったところ、プロセス全体での回収率は10 kbp及び4 kbpのDis_exDNAについては60%程度であったのに対して、より短いDis_exDNAの回収率は40%程度であり、Dis_exDNAの回収率はDNA長に依存することが示された。下水処理水が流入する都市河川において、Dis_exDNA及びAds_exDNAに含まれるARGsの実態を評価した。Dis_exDNA及びAds_exDNAに含まれるARGsは、全体の0.03%-20.9%、1.8%-26.7%をそれぞれ占めており、ARGsの全存在量の中で無視できない画分であることが確認された。これらの知見について、国際学会での発表に加え、国際学術雑誌への論文掲載を達成した。
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