研究課題/領域番号 |
17F17374
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
藤井 学 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 特任准教授 (30598503)
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研究分担者 |
FU QING-LONG 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2017-11-10 – 2020-03-31
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キーワード | アンチモン / 金属と有機物との錯形成 / 超高精度質量分析 / 有機物組成 |
研究実績の概要 |
本研究は、水環境中において毒性を示すアンチモンの化学形態と生物特性を明らかにすることを目的とする。アンチモンの化学形態は溶存有機物やpHなど種々の水質パラメータにより影響を受ける。特に、溶存有機物はアンチモンと錯形成し生物利用性に影響を及ぼすが、アンチモンが結合する有機物の分子組成に関してはほとんど知見がない。そこで、平成29年度の研究では、アンチモンの化学形態を明らかにする上で重要な溶存有機物の動態に関する研究に取り組んだ。具体的には、超高分解能質量分析を用いて金属類に配位する溶存自然有機物の組成を調べるための手法開発を行った。当該質量分析では、1ppmレベルで有機分子の質量を測定し、各原子の質量情報をもとに化学組成できるため、分子組成が明らかでない自然有機物の組成決定に有用である。本研究では、溶存自然有機物の代表種として腐植物質を用い、化合物同定アルゴリズムならびに有機化合物の部分構造に係わるデータベースとの照合により、腐植物質の有機分子組成を決定した。さらに、金属に配位可能な有機分子を特定するための計算アルゴリズムの開発も行った。各金属元素の有する安定同位体について、その質量差から有機金属錯体の分子組成を決定するアプローチを検討した。例えば、自然環境中でアンチモンは121-Sbならびに123-Sbで存在することから、ある有機分子がそれぞれのアンチモン同位体に結合した際に生じる質量差を検出されたマススペクトルから探索することで、有機-金属錯体の質量を決定する手法を開発した。検出された分子質量から分子組成を算出した結果、数千以上存在する有機分子の中でも、芳香族性の高い数%の有機分子が複数金属類と配位することで,有機鉄錯体が形成されることが示された。今回の手法開発では、既往研究との比較が可能である鉄原子について適用したが、今後は同手法をアンチモンにも適用する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アンチモンの環境動態を把握するために重要となる溶存有機物の組成を超高精度質量分析により詳細に調べた。その結果、金属類と結合親和性を有する有機物は、芳香族性が高いなどの結果が得られており、平成29年度の研究は概ね順調に進んでいると判断する
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度に開発した、超高精度質量分析による有機金属錯体の同定アルゴリズムを活用して、アンチモンに結合する有機物の組成を明らかにすると共に、有機物の起源や性質によりアンチモンとの錯形成特性がどのように変化するかを明らかにする野外調査、室内試験を実施する予定である。
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