研究実績の概要 |
シンチレータは放射線を検出する光学素子であり、ガン診断など放射線を用いた装置では必須の材料である。ガン診断装置では、蛍光寿命の高速化が、放射線(ガンマ線)検出器の原理から、必要である。近年、既存のシンチレータ結晶に100-1000 ppmの非常に少ない量のCa2+,Mg2+などの元素を共添加することで、発光量が維持ないしは増大し、蛍光寿命が数十%から2倍程度まで高速化される例が多く報告されてきた(共添加効果)。特に、ガーネット系にそのような事例が多く報告されているが、共添加による効果が発見されてから数年しか経っていないことから、まだ十分に研究されていない。 そこで、本研究ではガドリニウム(Gd)を主成分とする(Gd, Y)<sub>3</sub>(Al,Ga)<sub>5</sub>O<sub>12</sub>(以下GAGG系)およびGdよりもさらに重いルテチウム(Lu)をベースとした(Lu, Y)<sub>3</sub>(Al,Ga)<sub>5</sub>O<sub>12</sub>(以下LuAG系)で共添加効果の調査を行っている。 なお、Lu系のほうが、原子番号が大きいため、ガンマ線の検出効率が向上し、より核医学などの分野での応用は有効であるため、本研究は非常に重要である。 これまでに、独自の結晶育成方法であるマイクロ引き下げ法を用いて、Mg<sup>2+</sup>を微量添加したGAGG系列の結晶を育成した。そして、結晶の加工、研磨後に光学特性評価を行ったところ、Mg<sup>2+</sup>を添加したときに比べて蛍光寿命が高速化したことが分かった。また、高速化のメカニズムとして、発光賦活剤として添加したCeイオンの一部が、発光をつかさどるCe<sup>3+</sup> にならず、Ce<sup>4+</sup>として存在することが吸収スペクトルなどから類推された。これらの結果は、次世代の医療機器などの放射線検出素子に導入が期待できるものであった。また、関連した内容で国内学会等での発表を行うことができた。
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