研究実績の概要 |
京都大学研究用原子炉(KUR)を用いた中性子放射化分析法(NAA)は、これまでに宇宙地球化学分野をはじめとした様々な分野における重要な微量元素分析に用いられてきた。今回、2018年度から2年間の特別研究員奨励費において、エジプト第二研究用原子炉のM.Soliman博士を迎えて、大気環境分析(特にPM2.5,PM10など)を目的とした大気中浮遊塵の分析に、KURを用いたNAAが有効な手法として用いられるかを検討した(研究用原子炉への新規制基準対応のための約3年間運転休止を余儀なくされ、順調に研究が遂行できなかった)。保管している環境をモニターするための浮遊塵粒子(Suspended particulate matter, SPM)をろ紙に収集したものを用いてNAAを試みた。サンプリングされた大気中浮遊塵の分析を行い、目的の白金族元素や希土類元素、有害元素等の解析を行い、その結果、予備的な結果が得られた。2018年度の10月より原子炉の運転再開ができ、それまで地上10メートル付近でMCIサンプラーを用いて、1年以上にわたってサンプリングを行った試料について分析を行うことができた。現在、サンプリングや資料調整は2017~2020年度にかけて、サンプリングは継続中である。現在、首都大学東京のグループやつくば市の産業総合研究所のグループとも連携研究を推し進めることができ、サンプリングで得られた試料分析の比較検討が始まった。研究用原子炉(KUR)の定期検査の期間が長いため十分な分析期間と分析量が得られていないが、サンプリングと研究体制の構築ができた。学会発表も随時可能となった。エジプト第二研究用原子炉のM.Soliman博士はこれらの経験を自国に持ち帰り、研究を継続し、共同研究を行う予定である。成果は放射化分析の国際会議MTAA15にて招待講演として採用された。
|