研究課題
地球規模で進行する気候変動に対し、「気候変動緩和策」だけでなく、気候変動の進行を前提として、気候変動による悪影響を減らす「気候変動適応策」も重要であることが認識されるようになった。日本においても気候変動適応法が2018年に制定され、全国あるいは地域スケールでの適応策が議論されている。適応策の検討においては、気候変動が進行した将来の状態についての予測が不可欠であり。現在、農業、健康、災害などさまざまな分野での将来予測研究が進行しているが、野生動植物の分布や個体群についての将来予測の研究は不足している。本研究では、既存の生物分布データと環境データを用いて種分布モデルを作成し、将来の気候条件を当てはめることで将来の生物の分布を予測し、気候変動適応という社会的課題にこたえるための基礎的な研究を行った。本研究では、気候変動の影響を受けやすく、かつ人間生活に重要な水資源の健全性とも深くかかわる淡水生態系に着目した。水生植物は分布が離散的であり、また過去の分布記録の整理が十分ではない。本研究では、163種の水生植物を対象に過去~現在の分布情報を収集し、そのうち、十分な件数の情報が得られた種について、気候条件や、分布地とその周辺における土地利用(都市や農地の割合など)、湿地の地形的特徴や成因を用いた種分布モデルを構築した。また種の組み合わせを考慮する新しい解析手法も試みた。その結果、115種について解析可能なデータを得ることができた。種分布の分散の50%以上を環境要因で説明できるモデルを構築した。環境要因としては、湖沼の形態的な特徴、気候条件、周辺の土地利用条件の順で、重要性が高かった。また植物の形質の効果を分析したところ、性型システムや受粉様式において特徴的なパターンがみられ、水中で花粉媒介される植物は降水量が多い場所で増加しやすいといった傾向がみられた。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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cological Engineering.
巻: in press ページ: in press
Science of the Total Environment
10.1016/j.scitotenv.2020.139628
Wetlands Ecology and Management.
10.1007/s11273-020-09707-2