研究課題
本計画は、化石類人猿の四肢骨格の形状がもつ適応的意味を、比較解剖学的方法と工学的方法から分析し、その結果をもとに系統種間比較法を行って、現生ヒト上科の後肢骨がいかなる進化過程を経て今日の状態に至ったかを復元しようとしている。スペイン、ペネデス盆地(1200万から900万年前)から得られた化石類人猿の後肢骨格の形態調査をミゲル・クルサフォント古生物学研究所で行い、それと比較する目的で、化石ヨーロッパ類人猿も含め大型類人猿の系統の根幹に位置すると考えられるケニア産化石類人猿、ナチョラピテクスの四肢骨化石の形態調査をケニア国立博物館で行った。ケニア国立博物館では、小型CTを用いて、化石資料の構造データを収集する予定であったが、装置の故障のため三次元レーザースキャナーによる外部形態の計測と、これまで収集していた内部構造データを併用しながら分析を進めた。ナチョラピテクスについては、他の化石類人猿とは比較にならない多数の標本が得られており、大腿骨に見られる変異性の大きさに注目して、未記載標本の報告も含めた論文を執筆中である。ほぼ同時期に同地域で堆積した個体群内における変異性の大きさは、化石類人猿の特徴把握を慎重に行う必要がある点を示している。この内容の一部は日本人類学会大会において研究発表を行った。その他、ナチョラピテクスの前肢骨を対象とした記載論文も執筆中である。関連研究として、ナチョラピテクスの模式標本の完全記載、この種の厳密な体重推定とその性差に関する論文を発表した。化石人類については、膝蓋骨の内部構造から負荷・歩行様式を考察した研究を行った。
2: おおむね順調に進展している
2018年度、ケニア国立博物館へ小型CTを一時輸出し、類人猿化石資料をの内部構造を観察する予定であったが、装置の故障により計画を変更し、三次元レーザースキャナーによる外部形態の計測と、これまで収集していた内部構造データを併用した分析を進めている。当初の計画に比べると分析内容が制約されるものの、計画案に沿った新知見が得られると考えている。骨格の機能推定、運動復元を行う上で重要な体重推定についても、信頼性の高い結果を示した。化石人類を対象としてではあるが、膝蓋骨の内部構造から負荷・歩行様式を考察した研究を発表するなど、関連研究は順調に進んでいる。大腿骨に見られる変異性の大きさに注目して、未記載標本の報告も含めた論文を執筆中である。ほぼ同時期に同地域で堆積した個体群内における変異性の大きさは、化石類人猿の特徴把握を慎重に行う必要がある点を示している。この内容の一部は日本人類学会大会において研究発表を行った。その他、ナチョラピテクスの前肢骨を対象とした記載論文も執筆中である。
昨年同様、ミゲル・クルサフォント古生物学研究所、ケニア国立博物館での化石資料の調査を行う。それと平行して、これまでに最も豊富なデータを収集することができた大腿骨と尺骨についての論文発表と工学モデル作成を進める。後者については11月の日本人類学会大会で発表する。
すべて 2019 2018 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
Comptes Rendus Palevol
巻: 18 ページ: 223-235
10.1016/j.crpv.2018.06.002
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http://anthro.zool.kyoto-u.ac.jp/