研究課題
ペプチド分解酵素の一つであるジペプチジルペプチダーゼIII(DPPIII)は、基質であるペプチド(およそ3~10残基の短いペプチド)をN末端から2残基ずつ分解するエキソペプチダーゼである。これまでの研究により、DPPIIIはアミノ酸8残基からなる昇圧ホルモンのアンジオテンシンIIを分解し、高血圧マウスにおいて降圧作用を有することを明らかにした。この研究成果を踏まえ、本研究では高血圧とは別に、心血管系に大きなダメージをもたらす生活習慣病の糖尿病、特に、糖尿病合併症の糖尿病腎症および糖尿病心筋症に着目して、これらの病態に対するDPPIIIの有効性とその機序について検討した。糖尿病モデルdb/dbマウスにDPPIIIを週3回8週間連続して投与すると、腎障害の指標である尿中アルブミン排泄が有意に抑制された。免疫組織学的および電子顕微鏡による腎臓の解析では、糖尿病による腎糸球体の異常がDPPIII投与により著明に改善していた。一方、心筋を解析した結果では、心筋の線維化がDPPIII投与で減少していた。DPPIIIによるこれらの臓器保護作用を検討するため、生食を投与したdb/dbマウス(コントロール)、DPPIIIを投与したdb/dbマウスそれぞれから血液を採取し、コントロールマウスで増加しているが、DPPIII投与マウスで減少しているペプチドをペプチドーム解析で網羅的に探索した。その結果、9アミノ酸からなるペプチド(ペプチドX)を見出した。実際に、ペプチドXはDPPIIIで速やかに切断され、また、ペプチドXをdb/dbマウスに投与すると腎臓、心臓の機能障害がさらに促進された。このことから、DPPIIIによる糖尿病合併症に対する抑制機序の一つとして、糖尿病で増加するペプチドXを分解していることが分かった。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2020 2019 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (1件) 産業財産権 (1件)
Sci Rep
巻: 10 ページ: 188
10.1038/s41598-019-57040-3
FASEB J
巻: - ページ: In press
10.1096/fj.201902991R
Circulation
巻: 139 ページ: 2157~2169
10.1161/CIRCULATIONAHA.118.036761
Cancers
巻: 11 ページ: E1620
10.3390/cancers11111620
http://www.shiga-med.ac.jp/~hqbioch2/