アフリカトリパノソーマ症治療薬を目指したシアン耐性酸化酵素阻害剤の開発

2017 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 17F17420
• 研究機関: 京都工芸繊維大学
• 研究代表者: 志波 智生 京都工芸繊維大学, 応用生物学系, 准教授 (80401206)
• 研究分担者: EBILOMA GODWIN 京都工芸繊維大学, 応用生物学系, 外国人特別研究員
• 研究期間 (年度): 2017-11-10 – 2019-03-31
• キーワード: トリパノソーマ / シアン耐性酸化酵素 / Ｘ線結晶構造解析 / 薬剤開発 / アスコフラノン

研究実績の概要

寄生虫アフリカトリパノソーマが引き起こすアフリカ睡眠病は治療しないと死に至る恐ろしい感染症であり、アフリカツェツェベルト地帯で蔓延している。ヒトに対する重篤な健康被害だけでなく、家畜への感染は深刻な食料問題と経済発展の阻害を招き貧困の原因にもなっている。本研究では、アフリカトリパノソーマのミトコンドリアに存在するシアン耐性酸化酵素（TAO）を薬剤標的にしたアフリカ睡眠病に対する創薬研究をさらに発展させて新たな阻害剤の開発を目的としている。
本年度は、TAOの大腸菌での発現、酵素の精製を行い、純度の良い高活性のサンプルを得ることに成功した。さらに、精製した高純度のTAOのサンプルを用いて、ミトコンドリアへのドラッグデリバリーを改良したリポカチオン化したTAOの新規阻害剤のTAOに対する阻害活性を決定することができた。精製したTAOのサンプルを用いて、TAOの結晶化を行い、再現性良くTAOの単結晶を得ることに成功した。また、最もよくTAOを阻害する阻害剤とTAOの複合体の結晶構造を明らかにすることができた。しかし、分解能が悪く（3.5Å）、活性部位近傍に阻害剤の明瞭な電子密度を確認することができなかったので、更なるデータを収集して解析を目指している。他の骨格を有する阻害剤との複合体の高分解能の結晶構造も決定したいと考えている。また、今までの研究成果を学術雑誌：Eur. J. Med. Chem., Ebiloma GU et. al. 2018, 150, 385-402に掲載することができた。

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

計画としては、高純度のTAOを精製して、精製酵素を利用して、ミトコンドリアへのドラッグデリバリーを改良したリポカチオン化したTAOの新規阻害剤のTAOに対する阻害活性を決定し、最も強くTAOを阻害する化合物とTAOの複合体の結晶構造をあきらかにして、詳細な結合様式を決定することであったが、TAOのサンプルは再現性良く得ることに成功している。また、精製サンプルを用いてTAOの結晶化にも成功している。また、精製したTAOのサンプルを用いてリポカチオン化した新規阻害剤の阻害定数を決定することができた。しかし、TAOとの複合体の結晶の作成は、結晶のＸ線回折強度データ測定には成功したが、分解能が悪く、活性部位に阻害剤の明瞭な電子密度を確認することができなかったので、再度複合体の結晶を作成して構造解析を行う予定である。

今後の研究の推進方策

引き続きTAOの高純度のサンプルを調整して、TAOの結晶化を行う。TAOとリポカチオン化した阻害剤との複合体の結晶を作成して、放射光を用いて高分解能の結晶構造を明らかにする。得られた結晶構造からさらにTAOを阻害するような化合物を創出して、化合物の合成を行い、それらの化合物とのTAOの酵素活性の阻害定数を求めて、複合体の結晶構造も明らかにできればと考えている。

研究成果

• [雑誌論文] Inhibition of trypanosome alternative oxidase without its N-terminal mitochondrial targeting signal (ΔMTS-TAO) by cationic and non-cationic 4-hydroxybenzoate and 4-alkoxybenzaldehyde derivatives active against T. brucei and T. congolense (2018)
  • 著者名/発表者名: Ebiloma Godwin U., Ayuga Teresa Diaz, Balogun Emmanuel O., Gil Lucia Abad, Donachie Anne, Kaiser Marcel, Herraiz Tomas, Inaoka Daniel K., Shiba Tomoo, Harada Shigeharu, Kita Kiyoshi, de Koning Harry P., Dardonville Christophe
  • 雑誌名: European Journal of Medicinal Chemistry 巻: 150 ページ: 385～402
  • DOI: 10.1016/j.ejmech.2018.02.075
  • 査読あり / 国際共著
• [雑誌論文] Biochemical studies of membrane bound Plasmodium falciparum mitochondrial L -malate:quinone oxidoreductase, a potential drug target (2018)
  • 著者名/発表者名: Hartuti ED, Inaoka DK, Komatsuya K, Miyazaki Y, Miller RJ, Xinying W, Sadikin M, Prabandari EE, Waluyo D, Kuroda M, Amalia E, Matsuo Y, Nugroho NB, Saimoto H, Pramisandi A, Watanabe YI, Mori M, Shiomi K, Balogun EO, Shiba T, Harada S, Nozaki T, Kita K.
  • 雑誌名: Biochimica et Biophysica Acta (BBA) - Bioenergetics 巻: 1859 ページ: 191～200
  • DOI: 10.1016/j.bbabio.2017.12.004
  • 査読あり / 国際共著
• [雑誌論文] Ubiquinone binding site of yeast NADH dehydrogenase revealed by structures binding novel competitive- and mixed-type inhibitors (2018)
  • 著者名/発表者名: Yamashita Tetsuo, Inaoka Daniel Ken, Shiba Tomoo, Oohashi Takumi, Iwata So, Yagi Takao, Kosaka Hiroaki, Miyoshi Hideto, Harada Shigeharu, Kita Kiyoshi, Hirano Katsuya
  • 雑誌名: Scientific Reports 巻: 8 ページ: 2427
  • DOI: 10.1038/s41598-018-20775-6
  • 査読あり / オープンアクセス
• [学会発表] Mitochondrion targeting-lipocations significantly improve the trypanocidal activity of Trypanosome Alternative Oxidase inhibitors (2018)
  • 著者名/発表者名: EBILOMA Godwin Unekwuojo
  • 学会等名: Trypanosoma brucei metabolism meeting at Pasteur Institute Paris, 2018
  • 国際学会