I. インラインフォースカーブモードの開発:高速AFMでタンパク質の動態を可視化しながら、任意の位置で試料の力学操作と機械特性計測が可能なインラインフォースカーブモードを開発した。具体的には、イメージング中にPCに表示された画像で決めた位置で画像取得を停止し、プローブ-試料間距離を変化させてフォースカーブを取得し、引き続きイメージングを行い局所外力印加後の分子の動態を観察できるシステムを構築した。これにより微小管への局所外力の印加とそれによる構造変化やナノ力学特性の定量的解析が可能になった。 II. 微小管への欠陥生成と機械特性評価:インラインフォースカーブモードを使って、微小管からチューブリンダイマーを引き抜き、同時にフォースカーブを計測することに成功した。さらに、欠陥のサイズを変えながらフォースカーブを取得し、チューブリン間の結合力を定量化した。これにより、これまで理論的にしか研究されていなかった微小管の機械特性を解析することができた。 III. 微小管の自己修復過程の可視化:微小管にチューブリンダイマーの欠陥を形成後、その欠陥が再びチューブリンの再結合による修復される、自己修復と呼ばれる現象を捉えることに成功した。この測定により、微小管の自己修復過程は微小管の中空内で拡散しているチューブリンの結合で生じることを明らかにした。 IV. 欠陥周囲のキネシンの運動解析:微小管の構造欠陥周辺でのキネシンの運動観察を行った。微小管に沿って進んできたキネシンが欠陥直前で微小管から解離したり、プロトフィラメントを乗り換えて、欠陥を迂回して進んでいく様子が見られた。さらに再現性の高い実験を可能にするため、多数の微小管を平行に並べてストライプ状に配列させる基板条件の検討を行った。その結果、適切なバッファ条件と基板に脂質二重膜を用いることで微小管をストライプ状に整列させることに成功した。
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