研究課題/領域番号 |
17F17716
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
岡 浩一朗 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 教授 (00318817)
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研究分担者 |
KOOHSARI MOHAMMADJAVAD 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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キーワード | 身体活動 / 座位行動 / ウォーカビリティ / GIS / スペースシンタックス |
研究実績の概要 |
本年度は、主に都市部および地方都市に在住の中高年者における自宅近隣の道路レイアウトと歩行および座位行動の関連を検討した。住民基本台帳より無作為に抽出した40~69歳の中高年者3000名に、研究協力を依頼した。研究参加に同意した1076名について、居住地住所の地理座標を用いて、自宅から半径800m内の交差点密度(3方以上の交差点の総数)および半径1km内の道路インテグレーションを道路レイアウト指標として用いた。歩行については、通勤・通学、用足し、運動に関する歩行時間を調査した。座位行動は、テレビ視聴および自動車利用時の時間を調査した。その結果、交差点密度および道路インテグレーションが高いほど、通勤・通学による歩行を実施している者および通勤・通学による歩行で150分の身体活動量を満たしている者の割合が有意に高かった。また、交差点密度および道路インテグレーションが高いほど用足しで歩行をしている者の割合が有意に高かった。加えて、交差点密度および道路インテグレーションが低いほど、1時間以上自動車を利用している者の割合が有意に高かった。さらに、地方都市のみにおいて、交差点密度および道路インテグレーションが高いほど、テレビ視聴により2時間以上座位行動をしている者の割合が有意に高かった。以上のことから、道路の連結性や近接性が、歩行や自動車利用に加え、自宅内での座位行動(テレビ視聴)にまで影響を及ぼしていることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究課題に関する現在までの進捗状況は、きわめて順調に進展している。特に、まだ世界的にも十分な研究が行われていないスペースシンタックス理論を応用した近隣環境評価指標を用いて、身体活動不足解消を具現化するための都市デザインに関わるエビデンスを提供できたことは特筆すべき点であり、海外の研究者からも非常に高い評価を得ている。 また、米国で開発された居住地住所からの近隣の目的地(施設・サービスなど)までの距離をもとに、近隣の歩きやすさの度合いを評価できる無料かつ一般公開ツールであるWalkscoreについて、米国とは異なる日本の環境でも有効活用できるよう、その信頼性や妥当性についての検討も進めている。以上の点からも、わが国におけるこの研究分野の進展に大きく貢献している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究では、身体活動・座位行動の評価に調査票等により主観的に評価された指標を使用してきた。これらの研究により、各生活場面での行動に近隣環境がどのような影響を及ぼしているのかを明らかにすることができた。今後は、加速度計等を用いて評価した客観的な身体活動・座位行動指標(総時間、パターン、タイミング等)を用いることで、より精確で詳細な情報を用いて身体活動不足解消を具現化するための都市デザインを解明する。 また、これまでは主に、近隣環境が身体活動・座位行動に及ぼす影響について検討を行ってきたが、今後は近隣環境が肥満や身体機能、メンタルヘルス等の健康指標にどのような影響を及ぼすのか、さらにそれら両者の関係に、身体活動や座位行動がどのように媒介しているのかといった直接的・間接的な影響について、詳細な検討を行っていく予定である。
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