研究課題/領域番号 |
17F17723
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
宇佐美 徳隆 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (20262107)
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研究分担者 |
CHENG XUEMEI 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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キーワード | 酸化チタン / シリコン / 太陽電池 / ヘテロ接合 |
研究実績の概要 |
本研究では、結晶シリコン太陽電池の高効率化に向け、金属酸化物薄膜など異種材料とシリコンのヘテロ構造をキャリア選択性接合に用いるための基盤技術の構築と基礎学理の解明を行うことを目的とする。 今年度は、電子の選択性材料として期待される酸化チタン薄膜の成長において、金属チタンターゲットを用いた反応性スパッタリングプロセスの制御パラメータや基板の種類と膜の性状についての関係を調査した。その結果、基板の種類に依存して酸化チタン薄膜の電気的特性が大きく変化することを見いだした。具体的には、同一の成膜条件において、成膜直後の酸化チタン薄膜の電気抵抗率は、ガラス基板上においてシリコン基板上の薄膜と比較して3桁以上高いことがわかった。成膜直後の酸化チタン薄膜は、基板の種類に依存せずに非晶質であったが、熱処理によりシリコン基板上の薄膜のみが結晶化し、表面平坦性が低下した。これらの結果は、酸化チタン薄膜の基板の種類に依存した電気抵抗率の大きな変化が、膜の微細構造によることを示唆している。また、酸化チタン薄膜の吸収スペクトルは、成膜時におけるアルゴンと酸素の混合比によって変化し、透明性の高い薄膜を得ることに成功した。 併行して、チタンの一部をニオブで置換することによる酸化チタン薄膜の低抵抗化に取り組んだ。ニオブをドープした酸化チタンをターゲットとする高周波スパッタリングにおいて、成膜温度、ガス比、圧力およびポストアニーリングプロセスなどの最適化を通じて透明導電膜として機能する低抵抗化に成功した。今後は、界面でのパッシベーション性能の改善のため原子層堆積法との併用について検討を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シリコン基板上に太陽電池用のキャリア選択性接合に要請される吸収係数、電気抵抗率を有する酸化チタン薄膜の成長条件を得ることができた。界面でのキャリア再結合抑制のために、極薄パッシベーション膜の導入が必要と考えられるが、実績のある原子層堆積法を併用することで目的とする性能が得られる見通しを得ている。よって、本研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
低抵抗酸化チタン薄膜の実現には、通常は400℃以上の比較的高温プロセスが必要である。原子層堆積により形成する金属酸化膜をパッシベーション膜として機能させるには、膜の性状を非晶質とする必要があるが、熱処理による結晶化が懸念される。よって低抵抗酸化チタン薄膜の形成温度の低温化と、熱安定性に優れたパッシベーション材料の開発の両面から検討を進める。具体的には、ニオブドープ酸化チタン薄膜の電気的および光学的特性と成膜プロセスとの関係のさらなる調査、多様な金属酸化膜のパッシベーション性能の熱的安定性の調査を進め、最適な組み合わせを太陽電池に実装する。
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