研究課題/領域番号 |
17F17725
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
吉田 尚弘 東京工業大学, 物質理工学院, 教授 (60174942)
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研究分担者 |
JULIEN MAXIME 東京工業大学, 物質理工学院, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2017-07-26 – 2019-03-31
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キーワード | 位置別同位体比 / 炭素安定同位体比 / 脂肪酸 |
研究実績の概要 |
外国人特別研究員であるMaxime Julien博士とは彼の博士課程指導教員であったRemaud教授と長年、NMRや同位体質量分析計を用いて同位体置換分子種に関する共同研究を行っており、学生や若手研究者の行き来が近年活発になって来ていた。 Julien氏とは5年前にお会いし、日本から同行した当研究室の修士学生を指導していただいた。3年前、学位取得直後、有機分子の分子内同位体分布のワークショップ(過去4回Remaud教授と共催)に参加された折に、私がKeynoteで、Julien氏が学位論文内容を発表する機会を得て候補者が私の研究室で研究を推進したいという希望で本共同研究につながった。本研究では受入研究者である吉田がこれまで日本発信で世界標準としてきた分子内同位体分布(PSIA)を生体有機分子へ応用する研究計画を提案し、Julien博士が実験を担当した。 生物が作り出す脂肪酸は、糖やアミノ酸に比べ分子全体として13Cに欠乏した同位体的特徴を示すことが知られてきた。この13C欠乏は、脂肪酸合成経路における同位体効果によると予想されているが、未だに不明であり、本研究で機構の解明を目標とした。次項で後述するように、脂肪酸試料の分析に使用する13Cアイソトポマーシステムに不測の故障が生じたため、当装置の修理・調整が必要となり、脂肪酸試料の分析の開始までに4ヶ月間を要することとなった。そのため、平成29年度はブタンのPSIAを主に行った。 石油成分である長鎖n-アルカンや天然ガス成分である炭化水素類の起源および生成・分解履歴を突き止めることは、地球学分野における重要な研究課題の1つである。これら炭化水素類の起源・履歴推定には、安定炭素同位体分析が利用される。位置別同位体分析技術の装置改良を行い、i-ブタン、n-ブタンの位置別同位体分析を確立して適用し、興味深い結果を得、論文投稿準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年11月までに、13Cアイソトポマーシステムの立ち上げ、脂肪酸スタンダード整備と計測を行い、平成30年3月までに、脂肪酸試料の分析を行う予定であった。平成29年12月、脂肪酸試料の分析に使用する13Cアイソトポマーシステムに不測の故障が生じたため、当装置の修理・調整が必要となり、脂肪酸試料の分析の開始までに4ヶ月間を要することとなった。 一方で、前述したように、炭化水素系のPSIAに大きな進展があった。石油成分である長鎖n-アルカンや天然ガス成分である炭化水素類の起源および生成・分解履歴を突き止めることは、地球学分野における重要な研究課題の1つである。これら炭化水素類の起源・履歴推定には、安定炭素同位体分析が利用される。位置別同位体分析技術の装置改良を行い、i-ブタン、n-ブタンの位置別同位体分析を確立して適用し、興味深い結果を得、論文投稿準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
前述したように若干遅れた13C-PSIAシステムの立ち上げ、脂肪酸スタンダード整備と脂肪酸試料の分析を行う。脂肪酸試料の分析に使用する13Cアイソトポマーシステムに不測の故障が生じたため、当装置の修理・調整を行い、脂肪酸試料の分析を開始する。 本研究を通して、脂質の13C含有量が低い根本的原因が解明されるとともに、脂質の分子内炭素同位体組成の違いから生物種を推定する方法の構築が期待された。生物の代謝系の基礎的な理解を深める一方、地質記録に残された脂質の炭素同位体組成は、生命の存在を示す証拠として利用されてきたが、本研究の成果により、確実な証拠として利用することが可能となり、さらに分子内素同位体組成から当時の生物相を復元することが可能となりつつあるので、生命の起源および進化に関する議論が飛躍的に進展すると期待される。 これにより、日仏の化学、環境分野での科学的なつながりがさらに深まること。特別研究員の科学的人生のなかで重要で、最も生産的な時期に有意義な共同研究を日本の支援と良い環境の中で遂行できたことを、研究期間終了後に、世界のどこに行っても、誇りをもって発展させられる。科学を通してではあるが、候補者が日仏の文化の懸け橋となって、今後長く活発な活動をされることが、先端的な研究実績に加えて期待される。
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