研究課題/領域番号 |
17F17733
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中澤 公孝 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (90360677)
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研究分担者 |
MILOSEVIC MATIJA 東京大学, 総合文化研究科, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2017-10-13 – 2020-03-31
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キーワード | パラリンピック / 機能的電気刺激 |
研究実績の概要 |
パラリンピックアスリートは身体のいずれかに障害を持ちながらも日々ハードトレーニングを行うことで、運動に関連する脳領域が可塑的に再編されることが明らかとなってきた。本研究では特に体幹の制御が重要な車いす競技選手に焦点をあて、競技特性に関連した中枢神経の可塑的変化とそれを効果的に導く神経修飾法の効果に迫ることを企図するものである。具体的には、1)パラリンピック車いす競技選手の脳における可塑的再編成を調べ、これを導く計算モデルを構築すること、2)脳に対する神経修飾法として経頭蓋直流電気刺激、末梢神経刺激としての機能的電気刺激、それぞれの急性的影響を脳神経画像および電気生理学的に明らかにすること、を目的とする。本研究の成果は、車いす使用を余儀なくされている脊髄損傷者や下肢の障害を有する人々の日常生活動作の改善、ひいては生活の質の改善に寄与することが期待される。本研究の結果次の成果が得られた。 ①当初脊髄損傷パワーリフターを対象として脳の再編を調べたところ、運動野上肢領域の機能マップに健常者と異なるパターン、すなわち前腕や手指の支配領域に比べて上腕領域が大きいパターンを観察した。その過程で、グリッピングの力保持課題においてパワーリフター力の安定性が極めて高いことを発見した。一般の脊髄損傷者に対象を広げてこの能力を調べたところ、完全損傷者において健常者や他の障害による車いす使用者に比べて、この能力が有意に優れることを明らかにした。 ②下腿筋の機能的電気刺激が下肢筋全体に対し脊髄反射を抑制する急性の効果があることを明らかにした。 ③外傷性脳損傷による高次脳機能障がい者を対象として、手指の巧緻性向上を目指し、機能的電気刺激と手指の巧緻性トレーニングを実施したところ、巧緻性の改善とともに脳の活性化領域の増大が起こることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画の一部変更はあったが、当初は予期しなかった研究成果が派生的研究から得られるとともに、関連した基礎実験結果においてまとまった結果が得られ、その成果を国際誌数編にまとめることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究方策として、脊髄損傷者の脳再編に関する研究をさらに進める。現在のところ上肢機能マップにパワーリフターにおいて特異的パターンを見出しているが、これを一般の脊髄損傷者にまで対象を広げて調べる。さらに上記した成果に関連する研究として、一定の力保持課題遂行中の脳の活動領域を調べる。それによって、脊髄損傷による代償性脳活動と競技トレーニングによる可塑的変化がどのように関連するのかを明らかにする。
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