研究課題/領域番号 |
17F17735
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
堀江 重郎 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40190243)
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研究分担者 |
HOU QI 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2017-11-10 – 2020-03-31
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キーワード | 血中循環腫瘍細胞 / 去勢抵抗性前立腺癌 / Precision medicine / PSMA / バイオマーカー |
研究実績の概要 |
AdnaTest (QIAGEN)を用いて、磁気ビーズで血中循環腫瘍細胞(circulating tumor cell: CTC)を捕捉し、RNA抽出とcDNA合成を行い、cDNA 合成後に逆転写PCRでPSMAを含む遺伝子発現解析を行った。 交付期間である2017年10月から2018年3月の間に新規で計38回患者検体を採取し、登録累計患者数を117人にまで増やすことができた。この中でCTCのProstate-specific membrane antigen(PSMA)が陽性で、CTC検出後に治療変更をした症例は11例から13例になった。対して、PSMA陰性でCTC検出後に治療変更をした症例は14例となった。これらの2群で治療反応性と無増悪生存期間を算出した。その結果、これまでに得た、CTCでPSMAが陽性の症例では治療反応性が悪いという結果を再現することに成功した。さらなる確証を得るため、The Cancer Genome Atlas を活用して原発巣のPSMA発現と全生存期間の相関も解析した。この結果に関する論文を現在執筆中である。 去勢抵抗性前立腺癌の治療は多岐にわたっており、Precision medicineを施行するためには血清prostate-specific antigen (PSA)の値のみでは不十分なことがある。また、前立腺癌の特徴として空間的・時間的不均一性が挙げられ、常に進化する癌の遺伝情報を得るためには経時的な転移巣生検が理想的であるが、侵襲的である。そこで当研究室で行っているリキッドバイオプシーにより、CTCでPSMAを含む遺伝子発現解析を行うことはPrecision medicineを行う上で有効である。具体的には、PSMAが陽性である症例に対して、早期にタキサン系の全身化学療法を導入することで予後の改善が望めるのではないかと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度の研究計画であった、新規の去勢抵抗性前立腺癌患者全例 に対してCTC解析を行うこと、CTCのPSMAが陽性で治療変更を行う症例を集めるという目標を達成している。 また、PSMA陽性群と陰性群で治療変更後の治療反応性と無増悪生存期間を算出、解析した。さらにThe Cancer Genome Atlas を活用して333人の患者で前立腺癌原発巣のPSMA発現と全生存期間の相関を解析した。その結果、原発巣でPSMAが陽性の患者はそうでない患者と比較して有意に全生存期間が短いことを明らかにした。 以上のように研究計画目標を達成している。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、去勢抵抗性前立腺癌患者のCTC採取・解析を継続しながら、in vitroの実験系でPSMAの機能解析を行う。具体的には、PSMA発現が陰性の前立腺癌細胞株にPSMA発現ベクターをtransfectionして安定発現株を 作成する。PSMAが陽性の細胞株ではCRISPR/Casシステムを用いてPSMA遺伝子のノックアウトを行う。 作成した細胞株を用いて、Migration assayやSphere-forming assayでPSMA陰性株と陽性株で表現型に違いがあるかを観察する。マイクロアレイで網羅的な解析を行い、PSMAの下流分子及びPSMAによる治療抵抗性の機序を明らかにする。 さらに新規抗アンドロゲン剤で あるエンザルタミドやアビラテロンなどの薬剤に対する感受性がPSMA陰性株と陽性株で差があるかを検証する。
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