研究実績の概要 |
2018年度においては、研究課題「翻訳と受容を通じて見る、夏目漱石作品の「世界文学」としての価値の探求」に関わり、以下のような成果を得た。 ・研究代表者安藤文人は、夏目漱石の初期作品、ことに『吾輩は猫である』に関する比較文学的研究を進め、特に18世紀英国作家ロレンス・スターンからの影響に注目することで、自己言及的な語りにおける自己救済的(therapeutic)な機能の検討を進めた。また、基礎的な作業として海外における漱石研究に関する調査、文献リストの作成を進めた。 ・研究分担者Annette Vilslevは、2018年3月に英国ニューカッスル大学で行われた「40 years with Murakami Haruki」における発表に基づいて、“Soseki and Murakami, and their Coming-of-age Stories/Bildungsromane’’を執筆しており、これはRoutledge社から出版予定の論集に掲載されることが決定している。また、デンマークの出版社 EgoLibrisより2020年に出版されるデンマーク語訳『吾輩は猫である/三四郎』の序文とあとがきの執筆を依頼され、2018年はその準備を進めた。そのほか、2018年6月と7月には、クイーンズランド大学Lucy Fraser 准教授、ストックホルム大学 Jacqueline Berndt日本学教授と意見交換を行い、世界文学としての漱石の位置づけについて知見を深めるなどした。 ・本研究は2019年度も継続して行う予定であったが、研究分担者Vilslevがデンマーク、コペンハーゲン大学にポストを得たため、2018年度11月において終了するに至った。
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