研究課題/領域番号 |
17F17800
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
打越 哲郎 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, グループリーダー (90354216)
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研究分担者 |
DUBERNET MARION 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2017-11-10 – 2020-03-31
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キーワード | コンポジット / 金属クラスター / ルミネッセンス / ナノ粒子 / 薄膜 |
研究実績の概要 |
本研究は、ZnOの光吸収・発光特性とモリブデン6原子クラスター(Mo6クラスター)の特異な光吸収、発光特性をハイブリッド化することで、広い帯域の光を有効利用できる発光型集光器(Luminescent Solar Concentrator; LSC)の設計とその特性評価を目的とするものである。H29年度は、ゾル - ゲル法を用いたナノ粒子ZnOのコロイド溶液合成から着手した。昨年度は、0.5M濃度のZnO粒子を含む溶液を調製し、これらの粒子はランダムな形状を有し3~6nmのサイズ分布を持つことをTEM観察から確認した。この溶液をガラス基板上にスピンコート(回転速度3000rpmまたは4000rpm)することで、1層、2層または3層構造のZnO薄膜を作製した。多層膜の形成過程では、1層ごとにフィルムを80℃で2分間乾燥し、最終的に400℃で15分間アニールした。ガラス基板上に得られた膜は、SEM観察から、粒子形状由来の凹凸と不均一さがあるものの、約10nmの孔径を有する多孔質膜であり、厚さは100~200nmであることがわかった。また、薄膜XRD分析から、ZnO構造の存在が確認されている。蛍光特性はコロイド溶液と同一であり、ZnO材料について予想される365nmの励起に対して525nm付近の発光ピークを示した。また、本ZnO膜は、透明系に必要とされる80%以上の透過率を示した。現在のところ、このZnO薄膜上に電気泳動堆積法を用いたMo6クラスター層の形成を行っている。これまでに、UV光の下で赤色発光を有する金属クラスターの薄い層の堆積を確認しているが、均質層の形成にはプロセスパラメータの最適化が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ZnOナノ粒子の合成条件をほぼ確立し、短時間で再現性の良い溶液調製が可能となった。現況では、スピンコーティングの回転速度、時間、層などのパラメータを変化させ、薄膜作製の最適化を精力的に進めている。また、NIMSの施設を用いて、合成材料の構造、光学および化学特性の調査を進めている。 装置は自分自身で操作でき、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることもでき、順調に進んでいる。ZnO薄膜上へのMo6クラスターの堆積にも着手したところであり、今後はナノインプリント(NIL)装置の使用も予定している。
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今後の研究の推進方策 |
合成パラメータの最適化は、LSCシステムの効率向上に帰結する重要な課題である。特にZnO溶液濃度およびスピンコーティングパラメータ、用いる金属クラスターの種類(CsMoCl、CsMoB、CsMoIF など)と最適添加濃度、膜の構造(ZnO /クラスター積層膜、クラスター/ZnO積層膜、両方の混合膜など)についてさらに検討を行う。 ポリマーをマトリックスに使用するとZnO薄膜上への金属クラスターの堆積特性が改善されると予想され、PEG、PVPまたはPMMAの併用を検討する。これと並行して、光の閉じ込め効果による変換効率の向上を目的としたNILプロセスの開発を進める。その際、 パターンのタイプ、厚さ、ナノインプリントする層、圧力および温度の効果など、多くのパラメータについての検討が必要である。最終的に、得られたLSCの特性と変換効率を太陽電池に組み込んで評価する。
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