高次元圏論・高次元書き換え系の基礎理論と組み合わせトポロジーとの関係について研究し、以下の成果を挙げた。 (1)高次元圏の組み合わせ論的な表現である構成可能有向複体(constructible directed complexes)の概念を導入した。構成可能ポリグラフのω圏における実現と幾何的実現を調べ、前者については特殊な場合の解と一般の場合の予想、後者については特殊なCW複体の構造を持つことを示した。 (2)表現可能ダイアグラム集合(representable diagrammatic sets)による弱高次元圏のモデルを調べ、論文にまとめた。 また、圏論的量子力学に基づき、ある種の量子回路の図式を用いた計算系について研究し、以下の成果を挙げた。 (3)フェルミオン型量子計算のための図式言語(fermionic ZW calculus)を導入し、この言語においてフェルミオン型量子計算の主要な物理ゲートを表現できることを示すとともに、この言語の等式理論の完全な公理化を与えた。この成果は前年度国際会議FSCD2018にて発表していたが、技術的詳細も含め最終的な論文にまとめたものが、学術誌の特集号に招待され採録された。 前年度分も含め、これらの成果のほとんどは分野を代表する一流の国際会議・学術誌に採録されており、いくつかについては既に多くの研究者に引用されている。このように本研究の成果は世界的に十分認知されており、今後関連分野の発展に重要な役割を果たすことが期待できる。
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