研究課題/領域番号 |
17F17816
|
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
吉沢 道人 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 准教授 (70372399)
|
研究分担者 |
CATTI LORENZO 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 外国人特別研究員
|
研究期間 (年度) |
2017-11-10 – 2020-03-31
|
キーワード | 分子ケージ / 分子カプセル |
研究実績の概要 |
本研究では、多環芳香族パネルを有する動的ケージを新規に構築するとともに、その機能の開拓を行う。まず、配位結合やパイスタッキング相互作用、動的共有結合などを利用して、新規な動的ケージの構築に挑戦する。例えば、湾曲型の多環芳香族パネルにホルミル基を導入した前駆体を合成し、それとアミノ基を持つ架橋分子との脱水縮合で、狙いとする動的ケージを構築する。また、種々の多環芳香族パネルを含む分子パーツの自己組織化で、空間性質の異なる分子ケージも構築する。次に、得られた動的分子ケージを使って、特異な分子内包機能を開拓する。特に、難溶性で分離が困難な高次フラーレンの選択的な内包に挑戦する。さらに、水中で機能する外部刺激応答性の分子ケージやカプセルの開発にも挑戦する。本年度は、パイスタッキング相互作用を利用して、新規な光応答性分子カプセルの開発した。2つのアントラセン環の連結位置をメタ位からオルト位に変更したV型の両親媒性分子を新規に合成し、それらが水中で自己組織化して分子カプセルを生成することを明らかにした。その構造はNMRやMS, DLS, AFM, UV-vis分析によって決定した。光照射により分子内で2つのアントラセン環が定量的に閉環反応し、パイスタッキング相互作用が阻害されることで、カプセル構造を解離させることに成功した。また、加熱により2つのアントラセン環が定量的に開環反応し、再び自己組織化して分子カプセルを生成した。さらに、水中でのゲスト分子(フラーレンやフタロシアニンなど)の内包とその光刺激による放出にも成功した。光刺激に応答する動的な分子カプセルの開発を達成した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、パイスタッキング相互作用を利用して、新規な光応答性分子カプセルの構築を達成した。これまでに、吉沢グループで開発したV型の両親媒性分子に対して、その連結位置をメタ位からオルト位に変更した。オルト型の両親媒性分子も水中で自己組織化して分子カプセルを生成した。また、光照射により閉環反応を起こし、カプセル構造を解離させることに成功した。さらに、ゲスト分子(フラーレンなど)の内包とその光刺激による放出にも成功した。本成果は、Cattiを第一著者としてNature Communications誌(Nature姉妹誌)に論文投稿して、論文受理されている。以上のことから、本研究は当初の計画以上に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は、外部刺激に応答する新規な動的ケージやカプセルの構築と機能開拓を検討する。具体的には、湾曲型の多環芳香族パネルに高親水性のイオン性官能基や金属配位性のピリジル基などを導入することで、新たな分子パーツを合成する。それらを水中でパイスタッキング相互作用や配位結合を駆動力に自己組織化することで、新たな動的ケージやカプセルを構築する。その三次元構造を核磁気共鳴装置や質量分析装置などで解明する。また、分光学的性質や電気化学的性質を調査する。
|