研究実績の概要 |
シュウ酸など低分子ジカルボン酸は大気中の二次有機エアロゾル(SOA)の重要な成分であり、その詳細な組成分析よりSOAの起源・生成メカニズムを議論することができる。本研究では、西部北太平洋の小笠原諸島・父島で採取した大気エアロゾル試料の内、粒径別に採取したエアロゾル試料をブチルエステル誘導体化・ガスクロマトグラフ・質量分析計を用いて分析し低分子ジカルボン酸の測定を行った。その結果、9ステージ(直径0.1-0.43, 0.43-0.65, 0.65-1.1, 1.1-2.1, 2.1-3.3, 3.3-4.7, 4.7-7, 7-11.3, and 11.3-50 μm)のすべての粒径において、シュウ酸が主成分であり、マロン酸、コハク酸がそれに続くことがわかった。 また、2001年から2012年までに父島で採取した大気エアロゾル試料中の全炭素・窒素濃度とそれらの安定同位体比のデータを解析した。その結果、エアロゾル炭素・窒素の濃度は冬・春に高い季節変動を示し、アジア大陸の人間活動が大きく寄与していることを示唆した。現在これらの結果を論文にまとめ、国際誌に投稿する準備をしている。 更に、アラスカで採取した微粒子エアロゾル(PM2.5)を分析し、低分子ジカルボン酸の分布を解析した。その結果、バイオマス燃焼が有機エアロゾルの生成に大きく寄与していることが明らかとなった。この研究成果については、Atmos. Environ. 誌に論文として発表された。また、研究成果の一部をスイス・チューリッヒで開催された欧州エアロゾル会議(EAC)にて発表し、Best Poster Awardを受賞した。
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