本研究では複数の光素子機能を束ねる新素子(以下機能統合化素子と呼ぶ)の提案・プロトタイプ化を通じて、電子・光融合CMOSのキー技術であるシリコンCMOSフォトニクスを確立する。今年度の目標および進捗は以下の通りである。 1.SiGeエピ成長装置の導入 超高真空・気相成長(UHV-CVD)成長装置の仕様を決定した。同型の装置を用いた装置メーカにおける成長実験により6インチSi基板上にGeエピ結晶を成長し、平面性のよいGeエピ結晶が成長できること、Photoreflectance法によるエピ結晶のバンドギャップ収縮(於マサチューセッツ工科大(MIT))の生じること、を確認した。これまでに報告者がMITで成長してきたGeと同程度の結晶が得られる可能性を明らかにした、今後、受光素子を試作し素子性能の測定を通じ、この装置の性能確認を完了する。 現在は武田先端知クリーンルーム(本郷キャンパス)において、当該成長装置の立ち上げ/調整実験を進めている。 計画ではH18°に予定したGeのB因子決定のための予備実験をMITにおいて先行推進した。製作したGe-pn受光素子を用い、電界強度の増大に伴う吸収係数の増大を定量的に測定した。この解析によりフランツ・ケルディッシュ効果によるものであることを示唆する結果を得た。H18°にGeの光学遷移パラメタを明確化し、MS#4であるB因子を決定する。 2.機能統合化素子の構造設計 2次元有限領域時間差分(2d-fdtd)法により機能統合化素子の構造設計を進めた。本シミュレータは、MITから提供を受けた。今回は、シミュレータテストとして二分決定図(BDD)用のプラズマ反射光スイッチを設計した。この結果、スイッチ速度は数十psと高速に動作し、消光比は10dBを示し、BDDスイッチとして良好な性能を確認することができ、構造設計をすることができた。 機能統合化素子の構造を決定するため、パーセル効果による発光促進の基本的なパラメタである、微小共振器の品質因子Qと共振器中のモード数mを決定した。同時にNTTへ素子試作を発注し、シリコンリング共振器の要求条件を満たす素子構造を明確化した。 以上により、計画したマイルストンを全て達成し、一部H18°の分まで先行達成した。
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