研究概要 |
本研究ではSi-CMOS技術を用いて電子・光集積回路をSi基板上に製作する。現在主流であるすべての光素子をCMOS技術を用いて製作するアプローチとは異なる光機能統合化素子の概念と製作と可能性について明確化する。トランジスターと配線のみからなる電子集積回路に対し、光素子集積回路では発光、導光および受光の三要素に加え変調、フィルター、増光など多くの光素子が必要となるきわめて複雑な体系である。そこで、本研究では、この光素子の種類を低減する素子機能の統合化の実現可能性を明確化し、実際に機能統合化素子による電子・光集積回路を製作することを目的とする。 これまでに、機能統合化を実現する基本構造として共振器を選定し、統合化の必要条件である共振器の品質因子(Q)を求めた。変調とフィルター機能の統合化にはQ>10,000が、さらに共振器量子電気力学より発光を統合化するためにはQ/m>1,000がおのおの必要条件であることが明らかにした。ここで、mは共振器の長さと共振器内の光の波長の比、言い換えると共振器に生じた定常波を構成する光の波長数を示す。この必要条件を満たすことが共振器製作の課題である。 本年度は日本電信電話株式会社(NTT)への開発委託を通じ、Siリング共振器の製作を進め、半径が2.6-10ミクロンのリング共振器が上記必要条件を満たすことを見いだした。以上により、リング共振器によって光素子機能の統合化が可能であることを明らかにした。 さらに、光通信においてはIII-V族半導体のフランツケルディッシュ(FK)効果が共振器における屈折率変調原理として知られる。一般に、IV族系半導体ではFK効果は弱いと考えられ、電流注入によるプラズマ効果が使われている。本研究ではGeにおけるこの効果を測定し、InPなどIII-V族半導体と同程度のFK効果が得られることを明らかにした。 以上により、光素子機能の統合化が原理的に可能であることをしめした。
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