研究概要 |
H20年度は計画した機能統合化素子の試作を継続した。 1.エピ結晶 昨年度までにSiGeエピ成長の基本となる成長装置および条件の最適化を終了し、電子集積回路に光回路を集積する上で最大の問題であった、成長後のGeの高温熱処理について研究を進め、原理的には400℃以下の温度で十分に高性能なpnダイオードを製作する手法を明確化した。Geは高温熱処理をすることにより内部の結晶欠陥を低減し、リーク電流を低下させることができたため、高性能なデバイスが得られてきた。しかし、この高温熱処理は、電子集積回路の製作プロセスと整合性が悪く、電子・光集積化の障害となってきた。東大ではGe中の電子と正孔のドリフト速度が低電界で飽和し、一方で既報の文献は飽和電界を遙かに超える電界を印加し動作させていることを明らかにし、これがGeデバイスのリーグを必要以上に増加させていることを解析により明らかとした。このため、Geに印加される電界を精密に制御し、その値を限界まで低下させることにより、リーク電流を低下させることに成功した。電界を制御してこなかったこれまでのGeダイオードに比して今回の電界制御Geダイオードでは約二桁のリーク電流を低下させることに成功した。この結果、これまでの900℃程度の熱処理が不要となり、CMOSプロセスにおけるバックエンドプロセスにGeの製作プロセスを行うことができる。 2.機能統合化素子 機能統合化素子の基本構造としてはこれまで研究を進めてきた微小リング共振器を用い、研究を継続中。SiGeのエピについては、Si組成が1%程度と低く、実績を持つMITにおいて成長したも。ドライエッチングは昨年度に条件が明確化でき、素子として加工できることを確認した。今後は、電極形成に課題が残る。具体的には昨年度に試作したSiリングによる発光強度増強を電極加工により発光ダイオードとして活用する。また、SiGeをもちいることにより、発光波長の1.3μm, 1.5μm化を進める。変調器はフランツケルディシュ効果を用いた動作を実証する。 3.二分決定回路(BDD) これまでのシリコンフォトニクスでは光は信号伝播を分担し、信号処理は電子を用いるアーキテクチャーに準拠していた。今回、光に信号処理も分担させる、新アーキテクチャーに基づき光回路を試作し、世界で初めて光に信号処理と信号伝搬をさせることに成功した。BDDはSiリングとSi導光路を用い、2-bit加算機を製作したが、現在のCMOS加算機の100倍以上高速に動作することを確認した。
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