研究課題/領域番号 |
17GS0207
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
時任 宣博 京都大学, 化学研究所, 教授 (90197864)
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研究分担者 |
武田 亘弘 京都大学, 化学研究所, 助手 (80304731)
笹森 貴裕 京都大学, 化学研究所, 助手 (70362390)
辻 勇人 京都大学, 化学研究所, 助手 (20346050)
松田 一成 京都大学, 化学研究所, 助教授 (40311435)
永瀬 茂 分子科学研究所, 理論分子科学研究系, 教授 (30134901)
古川 行夫 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (50156965)
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キーワード | 立体保護 / 高周期元素 / 芳香族化合物 / スズ / 高周期14族元素 / 2-スタンナナフタレン / 9-スタンナフェナントレン / アレーン錯体 |
研究概要 |
本研究は、新規な物性・機能の発現を指向し、速度論的に安定化された種々の新規な高周期元素不飽和化合物を安定な化合物として合成・単離し、その物性を解明することを目的としている。本年度は、新規物性発現が期待できる芳香族化合物の高周期類縁体について検討を行った。既に申請者らは、立体保護基として2,4,6-〔CH〔SiMe_3〕_2〕_3-C_6H_2〔Tbt〕を用いることで、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン類のケイ素およびゲルマニウム類縁体を初めて安定な化合物として合成することに成功し、それらの芳香族性について報告している。新規物性発現の為の礎としてさらに高周期の14族元素であるスズを含む芳香族化合物の合成も必須であると考え、その合成を検討した。低温で9-Tbt-9-スタンナフェナントレンを発生させることには成功したものの、室温では[2+2]二量化することが判った。そこでさらなる立体保護基としてt-Buを加えた2-Tbt-3-t-Bu-2-スタンナナフタレン(1)の合成を検討した結果、室温でも安定な薄黄色結晶として単離することに成功した。各種NMRスペクトル測定の結果は、1の芳香族性を支持しており、特に^<119>Sn NMRでは264ppmというsp^2-スズ原子に特徴的な低磁場領域にシグナルを観測した。また、X線結晶構造解析により1の2-スタンナナフタレン骨格の高い平面性および各種構造パラメータを明らかとし、その十分な芳香族性が示唆された。さらに、1と[Cr(CH_3CN)_3(CO)_3]との反応により、1の2-スタンナナフタレン骨格のスズを含む環がクロム原子に配位したアレーン錯体である、η^6-クロムトリカルボニル-2-スタンナナフタレン錯体の合成に成功した。この結果は、含スズ芳香族化合物が炭素の系と同様遷移金属に対して配位子として機能することができるという重要な結果である。
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