(1)トランスクリプトーム解析・プロテオーム解析を利用した骨格系細胞発現遺伝子の網羅解析 破骨細胞・骨芽細胞のトランスクリプトーム解析を終え、分化過程において発現が変動する分子の同定を行った。これら分子の機能解析を行うため、KOマウス作成に着手した。また、骨細胞培養細胞株を入手して、骨細胞のトランスクリプトーム解析を開始した。一方、破骨細胞分化のマスター転写因子NFATc1と相互作用する分子をフォーカスドプロテオームの手法により同定した。この結果、新規NFATc1結合タンパク質を同定し、新たなNFATc1による転写制御機構の存在を明らかにした。 (2)骨免疫細胞間相互作用(破骨細胞-骨芽細胞、リンパ球-破骨細胞等)の解明 抑制性免疫受容体LILRB/PIRBが破骨細胞形成に抑制的に働いていることを見出した。また、Fc受容体であるFcγRIIB・FcγRIIIの機能を解明するために、これら分子のKOマウスを用いた解析を実施し、IgGは破骨細胞分化を負に制御していることを明らかにした。これらの結果はFc受容体の骨代謝における新規機能を示唆している(論文投稿準備中)。一方、胸腺髄質形成における破骨細胞分化因子RANKLの必須性、髄質細胞分化におけるRANKとCD40シグナルの協調的作用の必須性を解明し、免疫系におけるRANKLの重要性を確立した。 (3)KOマウスを用いた個体レベルでの機能解析 トランスクリプトーム解析により、骨芽細胞分化過程で発現が上昇する転写因子としてMafを同定し、そのKOマウスの解析を行った。このマウスは骨形成異常を示し、in vitroにおけるMaf欠損細胞の骨芽細胞分化は抑制されていた。また興味深いことに、Mafヘテロマウスでは加齢に伴って著しく骨量が減少し、骨髄腔は脂肪細胞で満たされていた。骨形成が抑制され、脂肪細胞が増加する老人性骨粗鬆症にMafが関与することを解明した(論文投稿中)。 (4)骨免疫疾患への応用を視野に入れた治療実験 KOマウスを用いた骨免疫学的疾患モデル実験を実施し、治療効果が期待される標的分子を同定した。
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