研究概要 |
(1)トランスクリプトーム解析・プロテオーム解析を利用した骨格系細胞発現遺伝子の網羅解析 これまで行ってきた破骨細胞・骨芽細胞のトランスクリプトーム解析を終え、分化過程において発現が変動する分子の同定を行った。また、骨細胞のトランスクリプトーム解析を実施し、物理的刺激を加えた際に発現上昇する遺伝子の同定を行った。現在、この遺伝子のKOマウス作成に着手し、生体のメカニカルストレス応答機構の解析を開始した。 (2)骨免疫細胞間相互作用(破骨細胞-骨芽細胞、リンパ球-破骨細胞等)の解明 樹状細胞やマクロファージにおいて抑制性受容体として知られているLy49Qがin vitroにおける破骨細胞分化に必須であることを見出した(BBRC,2010)。この結果は、Lv49QのリガンドであるMHCclassIが、破骨細胞分化に重要な役割を果たしていることを示しており、骨免疫細胞間の相互作用に関する新たな知見が得られた。 (3)ノックアウト(KO)マウスを用いた個体レベルでの機能解析 トランスクリプトーム解析により、破骨細胞分化過程で発現が上昇する転写抑制因子としてBlimp1を同定し、その破骨細胞特異的コンディショナルKO(CKO)マウスの解析を行った。このマウスでは破骨細胞数が減少し、大理石骨病様病態を示した。分子レベルでの機能解析を行ったところ、Blimp1は、破骨細胞分化を負に制御する転写因子であるIRF8やMafBの発現抑制を介したNFATc1活性制御に関与していた(PNAS,2010)。この成果により、B細胞の分化に重要なBlimp1の破骨細胞における新たな機能を明らかにした。またIκBζKOマウスを用いた解析により、IκBζはTh17細胞のマスター転写因子であるRORと協調的に働き、Th17細胞分化に必須の機能を持っていることを明らかにした(Nature,in press)。 (4)骨免疫疾患への応用を視野に入れた治療実験 実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)モデル実験を行ったところ、上述のIκBζKOマウスではEAEを発症しなかったことから、IκBζが自己免疫疾患の治療標的となることを明らかにした(Nature,in press)。
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