研究課題/領域番号 |
17GS0314
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
三室 守 京都大学, 大学院・地球環境学堂, 教授 (40142004)
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研究分担者 |
田中 歩 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (10197402)
野口 巧 筑波大学, 大学院・数理物質科学研究科, 准教授 (60241246)
村上 明男 神戸大学, 内海域環境教育研究センター, 准教授 (50304134)
関根 靖彦 立教大学, 理学部, 准教授 (80222074)
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キーワード | 光合成酸素発生 / シアノバクテリア / クロロフィル / 葉緑体 / 遺伝子移行 / 進化中間体 |
研究概要 |
光合成酸素発生系に関し、反応機構、獲得、継承の3つの課題について、全員による討論や協働と班員の独自の解析を行い、下記の成果を得た。今年度は2年目であり、実質的な進展が可能となった。 反応機構に関して、三室はクロロフィルd(Chl d)を主要な色素とするシアノバクテリアAcaryochloris marinaの光化学系II反応中心の電子供与体がChl dであることを世界で初めて明らかにした。これは酸素発生系の構築原理を問い直す契機となることとなった。さらに野口は、Ca2+を除去、またはSr2+に置換した光化学系IIを用いて、FTIR法による解析を行った結果、Ca2+はMnクラスターとカルボキシル配位子を介して直接的に相互作用し、酸素発生反応に関与していることが示された。 獲得過程について、田中は光合成装置の進化を部分的に再現することを目的に、Synechococcus WH8102にProchlorococcus MED4のクロロフィルb合成遺伝子を導入したところ、Synechococcus WH8102はクロロフィルbを蓄積した。この実験は、SynechococcusからProchlorococcusへの進化の過程を再現したことを意味することを明らかにした。また、村上は、渦鞭毛藻Alexandrium tamarenseについて光化学系2のD1蛋白質をコードするpsbAを解析し、複数の分子種の存在、ミニサークルへのコードと転写、C末延長配列の欠落とPEST領域における疎水度の低下、などの知見を得た。 継承過程について関根は、生物ゲノムには葉緑体移行シグナルとなりうる配列が多数、潜在的にコードされていることを実証した。よって核にコードされている葉緑体遺伝子は原始葉緑体から核へ転移した際に偶発的に移行シグナル配列を獲得した可能性を示した。 さらに、効率の良い実験の進展を図るため、分子生物学的手法の共有化を行うこととした。
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