研究課題
器官形成のための位置情報をつくるにあたり、座標軸の方向性(極性:どちら側を頭側にして、どちら側を尾側にするのか)を決める必要がある。今年度には、モーガン以来100年の謎だった極性を作るためのメカニズムを明らかにした。Patched(ヘッジホック受容体)ホモログ遺伝子をRNA干渉法によって遺伝子ノックダウンするとプラナリアが再生する時に体の頭尾軸が逆転することを見いだした。これをきっかけとして極性をつくるメカニズムの解読に成功した。すなわち、Patchedのリガンドであるヘッジホックが頭部で合成され、腹側神経索にそって頭側から尾側の一方向に輸送されているとすると、切断した断片の尾側からヘッジホックが漏れ、それがWntシグナルを活性化することで、必ず元の尾側に尾が作られると理解された。すなわち、プラナリアは神経軸索の輸送の方向性が体の極性を決めていると考えられた。極性の成立に伴い、尾側でWntシグナルが活性されるのに対し、頭側ではERKシグナルが活性化され、頭尾軸にそった位置座標がつくられること。さらにnou-darakeファミリーがERKシグナルをモジュレートすることによって、頭尾軸にそった位置情報の中から、頭・首・咽頭・尾といった体の部位が形成されることを見出した。そして、各部位ごとに脳の原基や咽頭の原基が形成され、各原基の中でも体の極性に応じた位置情報がそれぞれ作られて器官形成がなされることを明らかにした。プラナリアの再生を用いて体全体の位置情報と各器官の位置情報をつくり基本原理を明らかにした。また、これらの位置情報をつくる原理をマウスES細胞にも適用して、マウス脳の一部を作ることに成功し、臓器再生への一歩を踏み出した。
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