研究課題
平成20年度は網羅的代謝解析技術と大量データ処理に資する情報処理技術を駆使して効率的なガス分子の受容システムの探索を進める一方、ナノビーズ技術を用いたガス結合能を有する生体高分子の系統的探索を実施した。その結果、解糖系の中間酵素であるGAPDHやprostaglandin水解酵素などheme binding motifを持だない酵素に可逆的にヘムが結合し、COが配位することによって酵素反応が抑制されることが示唆された。ガスのような極小分子でもそのレセプター蛋白質を系統的に探索する手法が初めて確立した。ストレス誘導性ガスであるCOの新規受容体候補分子としてcystathionine β-synthase(CBS)を同定したが、COが複数の代謝経路をmulticentricに抑制することによって代謝システムを精妙に制御していることが明らかになった。一方、CO生成酵素であるheme oxygenase-2は基質である分子状酸素の濃度が低下するとCOの生成が追随して低下するため、酸素センサーと目される酵素である。脳はCOの生成が豊富な臓器の一つであるが、heme oxygenase-2とCBSを豊富に発現する小脳では、神経細胞がCOの生成源となり、astrocyteがCBSを発現して同酵素から生成されるH2Sを制御することを示唆する知見を得た。CBSのノックアウトマウスの新生児小脳スライスを用いた実験ではCOの消長に対する血管反応感受性を喪失するが、H2Sの外因性添加はK+channelの調節を介した血管拡張作用を発揮したことから、COが局所のneirovascular unitの代謝を制御して脳微小血管のトーヌスを調節するガスメディエータであることが初めて示された。その他酸素センサー分子であるHIF-1が低酸素を感知して核だけでなくミトコンドリアにも結合することが示された。
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